「50歳女性(身長155 cm / 体重49 kg)に対して、腹腔鏡下胆嚢摘出術が予定された。
点滴路を確保し、麻酔導入を行った。血管痛の予防のために、2%リドカインを50 mg静脈内投与した後、プロポフォールをTCI ( target - contorol infusion)で4.0 μg / mL、レミフェンタニルを0.3 μg / kg / minで持続投与し、フェンタニル0.1 mg、ロクロニウム40 mgを静注した。導入時、一時、心拍数が40代 / min前半、収縮期血圧が70 mmHgとなったため、硫酸アトロピン0.5 mgとエフェドリン4 mgを投与し、心拍数が60代 / min以上、収縮期血圧が90 mmHg以上に上昇したことを確認して、気管挿管を行った」
さて、ここに、七種類の薬剤が登場しますが、この内で、劇薬に分類されているのはどれでしょうか?
答え:実は、ロクロニウム以外すべてが劇薬なのです。ロクロニウムは劇薬ではなく、もっと危険な毒薬なのです。
ただし、これらの薬物は、日常の医療では通常使用されるもので、毒物及び劇物取締法で指定を受けている毒劇物とは一線を画するものです。でも、容量を間違えると患者の安全を損なうのは確かなので、注意を要します。
薬事法で言うところの劇薬の定義は、「致死量が、経口投与で体重1 kgあたり300 mg以下のもの」、毒薬の定義は、「致死量が、経口投与で体重1 kgあたり50 mg以下のもの」となっています。
劇薬は、アンプルまたはバイアルに貼られたラベルの薬品名が、必ず白地に赤字で表記されます。また、毒薬は、黒字に白抜きの表記がされています。
毒薬の容器に表示される 表記例 |
劇薬の容器に表示される 表記例 |
さらにつけ加えると、フェンタニルとレミフェンタニルは劇薬指定であると同時に麻薬の指定も受けています。ですから、これらは、他の薬剤と違って、麻薬処方箋で処方する必要があり、空のアンプルやバイアル、使わなかった残液も薬局に返却しなければならないのですね。
ところで、劇薬の「劇」という字の語源は何だろう、と思って調べてみたら、「虎と豚(イノシシのこと)が剣をもって戦っている様子から」という解説に出会いました。ほんとかウソかは分かりませんが、面白い解説だと思いました。
今日のお土産
月一で東京へ研修に行かれているT師長さんから、今日はさくさくキャラメリングというお菓子をいただきました。いつもいつもありがとうございます。