LP時代、レコードを入れているジャケットのデザインというのは、けっこう重要な要素でした。
最近では、インターネットで音楽をダウンロードできてしまうので、音楽の媒体であるCDやLPの存在すら不要になってしまった感があります。確かに、音楽は耳で聞ければそれで事足りるのですが、かつては、その入れ物にまでこだわっていた時代がありました。
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ビル・エヴァンス・トリオ 《ワルツ・フォー・デビィ》 |
京都府立医大麻酔科学教室の佐和貞治教授は、アナログのLPにこだわっておられます。佐和先生の場合は、LPのジャケットではなくて、音そのものへのこだわりのようです。
ビル・エヴァンス・トリオの
《ワルツ・フォー・デビィ》は、リバーサイドのオリジナル盤、日本盤、オランダ盤のみならず、100%ピュアLPという音質を追求してカーボンを含まない塩化ビニルだけでプレスした「白いLP」まで、数種類の
《ワルツ・フォー・デビィ》を持っておられます。
LPにこだわる理由は、その音質ばかりではなく、ジャケットデザインにもあるようです。いわゆる「ジャケット買い」と言われるLPの買い方がありました。音楽の内容は二の次にして、ジャケットの見た目だけで買う、という買い方です。
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ピエール・ブレーズ指揮 ストラヴィンスキー《春の祭典》 |
クラシック音楽のジャケットは、演奏家や指揮者の写真を配したものが多く、あまり魅力的なものはありません。
手元にあるものでは、ピエール・ブレーズ指揮クリーブランド管弦楽団による、ストラヴィンスキー
《春の祭典》のジャケットが、クラシックのアルバムにしては珍しく、アニメ風でしゃれています。
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キラパジュン《不屈の民》 |
フォルクローレ(民族音楽)のジャンルでは、キラパジュンの
《不屈の民》のジャケットが印象的でした。
かつてチリでアジェンデ政権がピノチェトが率いるクーデターによって倒されてしまい、祖国に帰れず、世界中で演奏活動を続けざるを得なくなったフォルクローレ・グループ、キラパジュンのアルバムです。握りしめたこぶしにチリの国旗をあしらった絵は、いつかはピノチェトをやっつけてやるもんね的意志を感じさせていますね。
他のジャンルに比べて、ジャズのジャケットには魅力的なものが多いように思うのは贔屓でしょうか?
ジャコ・パストリアスの
《ワード・オブ・マウス》のジャケットには、白夜の沈まぬ太陽の連続写真が使われています。このジャケットの表が夜、そして裏が昼の太陽になっています。そう言えば、このアルバムでは、ジャコがバッハの〈半音階的幻想曲とフーガ〉をエレキベースのソロで弾いていて、最初に聞いたときには度肝を抜かれたのを思い出しました。
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ジャコ・パストリアス 《ワード・オブ・マウス》表 |
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ジャコ・パストリアス 《ワード・オブ・マウス》裏 |
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リターン・トゥ・フォーエヴァー 《ライト・アズ・ア・フェザー》 |
チック・コリアのリターン・トゥ・フォーエヴァーのアルバムと言えば、グループと同名の
《リターン・トゥ・フォーエヴァー》という、海の上を飛んでいるカモメをジャケットに配したアルバムの方が有名なのですが、ジャケットデザインは、二作目の
《ライト・アズ・ア・フェザー》の方が好きです。
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リターン・トゥ・フォーエヴァー 《リターン・トゥ・フォーエヴァー》 |
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トミー・フラナガン・トリオ 《オーバーシーズ》初版デザイン |
ジャズのジャケットでは、文字もデザイン的な配慮がなされている場合が多いようです。トミー・フラナガン・トリオの
《オーバーシーズ OVERSEAS》というアルバムは、当初は、トミー・フラナガンの肖像をジャケットに採用していました。しかし、後に、《OVERSEAS》という発音と同じ《Over Cs》というダジャレ的発想から、「CCCC……」というデザインのジャケットになりました。確かに、この方が印象的ではありますね。
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トミー・フラナガン・トリオ 《オーバーシーズ》普及版 |
ぼくが気に入っている文字主体のデザインは、ジョン・コルトレーンの
《オレ》というアルバムジャケットです。シンプルでいて力強い。魅力的なジャケットです。
コルトレーンは演奏活動の後期になるにつれ、1曲の演奏時間がだんだん長くなる傾向がみられました。この
《オレ》でも、LPには、たった3曲しか収められていません。A面は、タイトル・チューンの〈オレ〉1曲(18分5秒)のみです。
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ジョン・コルトレーン 《オレ》 |