2013年5月12日日曜日

天使の分け前とパフュームの結末の違いは何によるのか?

昨日までの雨が上がり、朝から春の陽射しが暖かく射していました。
桂川から愛宕山を望む


 桂川から愛宕山を望むと、向こうに雲ひとつない青空が広がっていました。

イチジクの果肉は花ということなので、これはまだつぼみ?









 河原のイチジクの木には、もう青い実がなっていました。













 今日は、京都シネマで『天使の分け前』(ケン・ローチ監督作品:2012年)という映画を観ました。
主人公のロビー(右から二人目)は、
社会奉仕活動で知り合った仲間とともに
幻のモルトウィスキーを求めて旅に出ます
天使の分け前(The Angels' Share)とは、ウィスキーを樽の中で熟成させている間に、年に2%程度蒸発して失われる分のことを言うそうです。

 主人公のロビーは、街のチンピラでしたが、鋭い嗅覚と味覚をもっていたため、ウィスキーのテイスティングの才能を発揮して、ついには社会の中での居場所を見いだすことができました。

驚異的に鋭敏な嗅覚をもつ主人公のグルヌイユは
調香師のもとで香水の作り方を学びます



 同じように、鋭い嗅覚をもった若者を主人公にした『パフューム ある人殺しの物語』(トム・ティクヴァ監督作品:2006年)という映画がありました。
 こちらの若者グルヌイユは、鋭い嗅覚をもっているため、香水の中の成分を瞬時にかぎわけ、同じ香水を調合することができます。しかし、結局、彼は悲惨な最期を迎えてしまいます。



 このふたつの物語を比べると、ともに人より優る鋭い感覚を天から与えられていたにもかかわらず、前者では成功、後者では悲劇という対照的な結末を迎えています。この違いは、一体どこからくるのだろうか、と考えながらふたつの映画をふり返ってみました。

ロビー(右)を親身になって助ける
指導者のハリー(左)はウィスキー愛好家でした。
で、決定的に異なったのは指導者の質の差でした。
 『天使の分け前』では、主人公が障害事件の後、裁判所から命じられた300時間の社会奉仕活動をした際の現場の指導者ハリーが、ロビーのテイスティング能力を見いだします。そして、彼が元の暴力の世界に戻っていこうとするのを何度も何度も阻止し、まともな道を進むように励ましていました。






主人公の若者グルヌイユに
香水造りのノウハウを教える
調香師役は、ダスティン・
ホフマンが演じていました

 一方の『パフューム』にも、若者グルヌイユの鋭い嗅覚を見いだした調香師がいました。彼は若者に香水造りの方法を教えこみます。しかし、この調香師は、結局のところ、若者の特異な才能を商売に活かそうと利用しただけでした。
 そして、その調香師の元を離れたグルヌイユは、究極の香水を造ろうとして、ついに連続殺人を犯していきます。








 自分の才能を活かすも殺すも本人次第、と言ってしまえばそれまでなのですが、良き師、良き指導者に巡り会えるかどうかも大きな要素のひとつなのかもしれませんね。