2013年5月19日日曜日

雨の日曜日にはLMAの話をしよう

 厚生労働省が定めている初期臨床研修における経験目標の中の基本手技には、「気道確保」「バッグマスクによる人工呼吸」「気管挿管」は項目として挙げられていますが、「ラリンジアルマスクの挿入」という項目は入っていません。

 しかしながら、京都市立病院麻酔科での初期研修では、機会があれば、研修医の先生方にもラリンジアルマスク(以下LMA)の挿入を経験してもらっています。それは、LMAで麻酔をしてもらおうというのが目的ではなく、挿管に代わる気道確保の選択肢のひとつとして、LMAを使う方法があるということを知ってもらうためです。
LMA博物館の棚の前に立つ
アーチ—・ブレイン博士
(J.R.Brimacombe 'Laryngeal Mask
Anesthesia' 2nd ed. Saunders 2005)


 LMAはイギリスのブレイン博士が開発しました。彼のLMAに関する一番最初の論文は1983年に出ています。
 しかし、このLMAの威力が世界中に認められるまでには、10年近い年月を要しました。そして、今や挿管困難のアルゴリズムでは、第一選択としてLMAが挙げられています。
ブレイン博士による世界初の
LMA使用経験を報告した論文

Br. J.  Anaesth. 55, 801 - 804. (1983)






















LMAで無事呼吸管理ができた
頸部悪性腫瘍症例

 興味深いのは、ブレイン博士の最初の論文の中に、すでに挿管困難症例患者の気道確保法として、LMAが紹介されていることです。
 左の写真の患者は、頸部の発達した悪性腫瘍のため、喉頭展開しても声門を確認できませんでした。しかし、筋弛緩薬を用いることなく、喉頭鏡を用いずにLMAを挿入して麻酔管理ができたと、最初の論文で報告され、この時すでに、挿管困難に対してLMAが威力を発揮するであろうことが示唆されていたのでした。












極度に蛇行した主気管のため
他院では挿管による全麻が拒否されました
ぼく自身の経験では、主気管が極度に蛇行した患者さんの全身麻酔に対して、LMAを用いて無事に麻酔を終えた症例があります。
 この患者さんは、他院で挿管を拒否された経緯がありました。でも、LMAを用いれば、気管チューブの先端が気管壁に当たる心配がないと判断したので、麻酔を引き受けました。





 この例のように、挿管困難でなくても、主気管が蛇行していて、気管挿管に抵抗を感じるような症例に対しても、第二の選択肢をもっていれば、チャレンジすることができるのですね。