2013年3月31日日曜日

京都の花は満開に

京都市立病院南駐車場の桜もいよいよ満開
お待たせしました。
 京都市立病院南駐車場の桜が、ついに満開となりました。



 










 さて、今日はキリスト教では、復活祭。毎年、「春分の日の後の最初の満月の次の日曜日」に復活祭が祝われるので、クリスマスのように日が固定していません。今年は、春分の後の満月が3月27日だったので、その次の日曜日である3月31日が復活祭となりました。

西院カトリック教会の聖母マリア像と満開のしだれ桜


 金曜日に十字架に架けられたイエスが三日後に復活したのが、日曜日ということになっています。
復活祭に配られる、きれいに彩色されたゆで卵

 キリストの復活は英語では
the Resurrection
と定冠詞をつけます。

 救急医療の分野で、心肺停止を来した人を蘇生させ、文字通り生き返らせることは、resurrectionではなくて、resuscitationという言葉を使います。CPRRresuscitationです。


(ちなみにCcardio-で心臓の、Ppulmonaryで肺を意味しています。最近では、脳cerebralの蘇生も加えて、CPCRすなわち
Cardio-Pulmonary-Cerebral-Resuscitationと呼ぶこともあります)











 今日は、京都市立病院の東を南北に走る御前通りにある小学校の桜と、天神川沿いの桜を紹介します。
四条御前南にある小学校の桜
天神川沿いの桜


 

2013年3月30日土曜日

馬は酔ってもインディオはしびれない

街を歩くと、今は桜がまっ盛り。

 阪急電車の先頭車両にもさくらの看板。



公園の桜も
今や満開。





 錦市場にある八百屋さんの店先で、小さな野菜や果物に顔を描いた、愉快なディスプレイを発見。











 花屋さんにはチューリップが目立ってきましたね。














南駐車場出入り口にあるアセビの木
さて、京都市立病院の南駐車場の出入り口には、アセビの木があります。 アセビは、この季節、スズランのような可憐な白い花をたくさん咲かせます。
 このアセビ、漢字では馬酔木と書きます。昔、馬がアセビの木の葉や枝を食べて、足がフラフラになったのを見た人が字をあてたのかもしれません。
 実際、アセビには、グラヤノトキシンという毒素が含まれていて、これを食べると、嘔吐・下痢などの消化器症状とともに、四肢がしびれるという神経症状があらわれるそうです。
 奈良公園では、シカたちがアセビを食べないため、所によってはアセビの林のような場所もできているとか。

 アセビの毒素は、胃粘膜あたりから吸収されるので、神経毒になるのでしょう。
白いツボ状の花は可憐だけれど、食べると…
一方、現在麻酔で使われている筋弛緩薬のルーツであるクラーレは、アマゾンのインディオであるヤノマモ族が矢毒として使用しているものです。彼らは、矢尻や槍先に植物から抽出したクラーレ成分を塗って、吹き矢を当てて捕まえたサルなどを食べています。
 このとき、アセビのもつグラヤノトキシンと同じように、食べた毒が体内に吸収されてしまったら、食べた人にも毒の効果すなわち筋弛緩効果が現れてしまうことになってしまいます。

 ところが、クラーレで殺した動物の肉は、どこを食べても安全なのです。これは、クラーレが、強酸性の環境である胃液の中では解離型といって、イオンの状態で存在しているために、組織の中を通過できず、体内に吸収されないからなのだそうです。(参考:天木嘉清『アマゾンからの贈り物 矢毒クラーレの旅』[真興交易医書出版部])

 クラーレを用いた矢毒というのは、自然界にある毒の性格を見抜いて作られているのですね。

2013年3月29日金曜日

桜が満開になる前にさようなら Part Ⅱ

京都市立病院南駐車場の桜はいよいよ八分咲き。
 満開になったら、桜の向こうの新棟は見えなくなるのかしら?












Tさんお元気で
3月31日が日曜日にあたるので、今日が辞令の日でした。手術室では、看護師のTさんが退職されることになり、辞令のあと、手術室へ挨拶にみえました。










 もう一人、退職される手術室部長のN先生は、辞令を受けとられたあとも予定手術と臨時手術の麻酔を担当されていました。


さて、今夜は、京都駅のホテルグランヴィア京都で、新棟開設記念パーティがとりおこなわれました。院長はじめ、外科系ドクターが参加し、手術室スタッフ(ナースと麻酔科医)とともに新棟の開設を祝いました。

 この会は、のべ23年間、京都市立病院麻酔科に在籍されたN先生のお別れ会も兼ねていました。
 




参加者を代表して、院長が花束と記念品として旅行券をN先生に贈呈しました。

N先生、長らくのお勤め、ご苦労さまでした

 新棟の開設前の準備では、T師長さんらは、連日深夜零時まで病院に居残って準備をされていました。このパーティでは、T師長さん,D副師長さんらをねぎらって、ナースからサプライズプレゼントも渡されました。
 師長さん、副師長さん、ほんとうにご苦労さまでした。
T師長さんへ感謝の気持ちをこめて

2013年3月28日木曜日

桜が満開になる前にさようなら

 今朝は、雲の合間からの日の出でした。昼間は一時、かなりきつい雨になりましたが、夕方には、上がっていました。














 京都市立病院南駐車場の桜は、一日経つと七分咲きになっていました。




  今日は、週に一度、京都市立病院麻酔科に応援に来て下さっているM先生の最後の勤務日でした。
 この四月からは、大学病院の麻酔科に戻られることになっています。
外科のK先生とナースNさんとともに
 

茶目っ気たっぷりのM先生と
最後に指導を受けた研修医のM先生


「お世話になりました」とM先生から
いただいたC³のお菓子。
こちらこそ、ありがとうございました。
M先生は穏やかな先生で、研修医からもナースからも慕われていました。最後の勤務日になる今日、M先生はナースから花束を贈呈されていました。


 大学でも、若い先生方を穏やかな視線で指導されることでしょう。

 長らく、私どもの病院のために尽くしていただいて、感謝しています。ありがとうございました。

 お元気で。



病院の桜は五分咲き。ワシントンは雪でした

 風邪気味で、風呂の後横になったら、そのまま寝てしまいました。3月27日分のブログを今ごろ(3月28日3時AM)書いています。

南駐車場の桜は五分咲き
  京都市立病院の南駐車場にある桜の木は、五分咲きくらいです。今朝は少し肌寒い感じで、こういうのを花冷えと言うのでしょうか?













 元、男子更衣室の部屋に事務机と椅子が8組搬入されて、部屋らしくなりました。考えてみれば、来週にはこの席が新しい先生方で埋まるのですね。楽しみです。
































 [NIH通信]

 アメリカのNIHで研究をするために、先日(3月20日)ワシントンDCに向けて出発したK先生から、メールが届きました。
 一昨日雪が降りました。
 相棒ができました。日本で売ってないVWのJettaという車で、新車でも日本円で150万くらいです。

2013年3月26日火曜日

il novello

 ボジョレヌーボーのワインのように、オリーブオイルにも初摘みのオリーブから抽出したものがありました。昨年の秋頃に収穫されたオリーブの実から作られたもので、イタリア語で、
il novello(新物)と呼ばれています。

オリーブオイル専門店Tre cipressi
il novello
四条御前を東に少し行ったところに、Tre cipressi(トレ チプレッシィ:三本の糸杉という意味だそうです)というオリーブオイルの専門店があります。
 先日、ここでシチリア産のオリーブオイルのil novelloを買い求めました。


 パンにつけて食べると、まだオリーブの青々しい香りの残ったさわやかな味がしました。



 
 
 初摘みのオリーブオイルを味わいながら、「初心」について考えてみました。

 世阿弥の言葉に「初心忘るべからず」というのがあります。
西院のギター教室の表に掲げられた額
実は、これには三箇条の口伝があるとして、
 是非の初心忘るべからず
 時々(じじ)の初心忘るべからず
 老後の初心忘るべからず
と、「花鏡」の中で世阿弥は述べています。
 
 小西甚一氏の解釈によれば、この三つは
 批判基準となる初心を忘れてはならぬ
 自分のそれぞれの時期における初心を忘れてはならぬ
 老後の初心を忘れてはならぬ
ということだそうです。

 ここで、「初心」というのは、世間一般に解釈されているような「物事を始めたときの新鮮な気持ち」というような意味ではなく、未熟であるという意味での初心ということなのだそうです。

 未熟だということに気づき、それを認めることが芸を上達させるためには必要な姿勢であるというのです。だから、その未熟さが常に後の判断基準として活かされるのでしょう。何度くり返しても完璧ということはないわけだし、さらに困難な課題はいくつになっても目の前に現れるわけで、何歳になっても初心を忘れるわけにはいかないということを世阿弥は言ったのでしょう。

 若い研修医諸君にとっては、静脈路をひとつ確保することが大変なことです。それを失敗したのを見て、指導医が「お前、点滴するの下手やな」などと言ったとしたら、その指導医は、自分自身のその時々の初心を忘れてしまっているわけです。

 オリーブオイルやワインなら、初物というだけで味わう価値があります。つまり、初心は初心としての意味をもっているわけです。しかるに、私たち麻酔科医にとっては、そのときどきの初心というのは、あくまでそれを乗り越えるべきものととらえて、初めて価値が出てくるのではないでしょうか?

 以前に、大蔵流狂言師の故・茂山千之丞さんから色紙をいただいたことがあります。

 そこには、「伝統 それはそれを超えていくもののためにのみある」と書かれてありました。この「伝統」を「初心」と読みかえると初心を忘れてはならない理由がよく分かるように思いました。
 

2013年3月25日月曜日

デスフルランが呼気一回換気量に及ぼす影響

 先日、ドレーゲルの新しいタイプのFabius Tiroには、デスフルラン使用時の補正ボタンがついているという話をしました。

 デスフルラン使用時には、実際の換気量に対して測定値が多め(12〜15%程度多め)に表示されます。この測定値を実際の換気量に近づけるために、新しいFabius Tiroには、「Des補正On」というボタンがつきました。

 なぜ、このような補正が必要なのかについて業者に質問したところ、次のような回答をもらいました。
中に細〜いフィラメントが見えます
Fabius Tiroの
熱線式フローセンサー













 Fabius Tiroの呼気ガス流量測定は、熱線式フローセンサーを用いて行われています。
 この熱線式フローセンサーは、もともと空気を用いて較正されているため、吸入麻酔薬が存在した場合には、流量を多めに評価してしまうらしいのです。セボフルランだと1〜2%程度で、測定値のずれはさほど問題にならないのですが、デスフルランでは、1MACが6%と高濃度で使用するために、差が大きくなるのだそうです。

 この補正式は、次式のようになっています。

     補正VT=表示されたVT ×( 100 − 2 × デスフルラン濃度 )/ 100

 つまり、デスフルランを高濃度で使用すればするほど表示された換気量と実際の換気量との差が大きくなってきます。

 ドレーゲルの麻酔器Apolloでは、デスフルランの濃度をフィードバックしながら、VTを補正して表示しています。しかし、Fabius Tiroでは、この補正式の中のデスフルラン濃度を4%に固定して計算しているので、濃度が4%よりも濃いときには、やはりVTは多めに出ていることに注意しなければならないそうです。



 今日のお土産。

ナースのKさんから、東京土産のシュガーバターサンドの木をいただきました。
 Kさんは、家族で東京ディズニーランドへ行き、東京ドームでプロ野球のオープン戦を観戦してこられたそうです。

 ありがとうございました。





なぜだか「しらすパイ」は昼のお菓子なのだそうな
また、研修医二年目のY先生からは、しらすパイをいただきました。
 Y先生は、静岡で開催されたウェット・ラボに参加され、全身麻酔をかけたブタを患者さんにして、腹腔鏡下胆摘の実習をされたそうです。

 ごちそうさまでした。

2013年3月24日日曜日

春爛漫。学ぶ門には福来たる

 小中学校の学年ごとの終業式も終わって、世の学生諸君はは春休み。
 四月からの新学期・入学式を前に、ひと呼吸、といった感じの季節です。



 京都市立病院で二年間の卒後初期臨床研修を終えた研修医諸君も、いよいよ今週は終了式を迎えます。
 





 街中では、彼らの門出を祝うかのように、
色んな花が咲き出しています。






問題:この中で、麻酔科のテキストとして
ふさわしくないものがひとつあります。
どれでしょう?



 京都市立病院麻酔科でも、四月から新しい先生方を迎えるにあたり、Clinical Anesthesia Procedures of the Massachusetts General Hospital (第8版)を12冊、研究図書費で購入しました。
 卒後すぐの研修医の先生方には英語に慣れるため、専攻医の先生方には麻酔に慣れるため、スタッフにとっては後輩の指導に慣れるため、等々目的は異なるでしょうが、麻酔科全体で常に学ぶ姿勢を身につける道具のひとつにしていければいいな、と期待しています。








らんでんフェスタ会場の嵐電西院車庫




  ところで、今日は、西大路四条の東にある嵐電西院駅の車庫で、「らんでんフェスタ2013」が開催されました。暖かい春の陽射しの下、大勢の嵐電ファンがお祭りを楽しんでいました。

この三月末で引退する通称パトトレイン

2013年3月23日土曜日

ツバメの帰還と術後嚥下機能の回復

 今年も、軒先の巣につがいのツバメが帰ってきました。
今年帰ってきたツバメ
一昨年は、カラスに巣が壊されて、孵化した子ツバメがカラスに襲われました。その後、軒の角にもうひとつの巣が作られて、去年は、二度ツバメが巣立っていきました。

 さて、ツバメは英語でswallowと言います。このswallowには、「ぐっと飲みこむ」という意味があります。日本語でも飲みこむことを「嚥下」と言い、この熟語にも「燕(ツバメ)」という文字が入っています。偶然でしょうか?
 子ツバメが親ツバメから餌をもらうときに、虫などをぐっと丸呑みしている動作あたりからの連想なのでしょうか?語源についてはよく分かりません。しかし、実際、去年目撃して驚いたのは、親ツバメが捕ってくる生き餌にトンボがいたことでした。
 小さな子ツバメは、文字通りトンボを丸ごと嚥下していたのでした。

去年巣立った子ツバメたち
この子たちがトンボを丸呑みしてました



 全身麻酔による術直後には、水も食べものも摂取してはいけないことになっています。これは、ひとつには嚥下機能が回復していないときに食べたり飲んだりすると、誤嚥する危険性があるためです。
 「喀痰なども飲まずに出して下さいね」とナースが声をかけるのも、術後の嚥下反射の回復の遅れを気にするためだと思われます。
 近年、筋弛緩薬ロクロニウム(商品名エスラックス)の拮抗薬であるスガマデックス(商品名ブリディオン)を使用するようになってから、少なくとも筋弛緩薬による嚥下機能低下の心配が軽減されたように思われます。


 朝夕、肌寒く感じる中にも春の兆しが感じられる今日この頃。
 今日は、夕焼けに西の空へと一直線にのびる飛行機雲が見えました。