2013年3月20日水曜日

京都市立病院をスター型ネットワークの中心に

 京都市立病院の南にある五条通りを西の方向へ進むと、亀岡方面に抜けていきます。
千代原口トンネル


 この五条通りを含む国道9号線は交通量の多い道路のひとつで、あちらこちらで渋滞がおこります。
 西京区にある千代原口の交差点は、南北・東西ともに交通渋滞が起こる場所として知られていました。この交差点を立体交差化するために、国道9号線にトンネルを作る工事が13年来続けられてきました。そして、先月(2月)23日15時に、ようやくトンネルが開通しました。




 結果、千代原口交差点での交通渋滞は緩和されましたが、トンネルの前後での渋滞が依然として残り、ところによっては、以前より渋滞がひどくなったような印象があります。

平成17年度の東日本の高速道路での渋滞原因
(西成活裕『渋滞学』より)
このような渋滞はなぜ起こるのでしょうか?
 西成活裕『渋滞学』[新潮選書]によれば、渋滞原因として一番多いのは、「サグ部・上り坂」での自然渋滞なのだそうです。サグ(sag)というのは、棚などのまん中が重みでたわんだ部分。そのゆるやかにたわんだような状態の道を「サグ部」といいます。
 このサグ部の傾斜は緩やか(100m進むと1m上昇あるいは下降する程度の坂道)なので、これくらいの坂道では、運転していてもなかなか気づきません。気がつかないために、運転手はサグ部にさしかかって上り坂になってもアクセルはそのままで走ろうとして、少しスピードが落ちます。すると後続車との車間距離が縮まり、これが後続車に波及して自然渋滞を生むのだそうです。

サグ部と減速の伝播の様子と自然渋滞。
サグ部は気づかないほどの坂道で、
後続車のブレーキの程度はより大きくなり、
後ろへ連鎖的に増幅されて伝わってゆく。
(西成活裕『渋滞学』より)











 この『渋滞学』という本の中に、ネットワークの話がありました。インターネットの接続形態の例として、バス型、リング型、スター型という三種類の接続形態があるそうです。
 この絵を見ている内に、市中病院と大学医局との関係が重なって見えてきました。

(西成活裕『渋滞学』より)

 市中病院と大学医局との関係は、スター型のネットワークと考えられます。従来は、大学医局をスター型の中心にすえて、いくつかの市中病院へ医師を派遣するというネットワークでした。(「○○病院は××大学の関連病院だ」というのは、まさに大学中心のネットワークを表現した言い方ですね)

大学医局を中心とした
従来型ネットワーク
大学医局が人を出さない
と言えば…
このネットワークだと、たとえば、S病院からT病院へ医師が直接動くことはできません。病院間の異動の人事権は大学側が掌握しているからです。
 また、大学医局から人的供給を絶たれようものなら、S病院はたちまち孤立無援となってしまうという構図になっています。






 2006年から始まった卒後医師初期臨床研修制度は、こうした大学医局による人材派遣制度に風穴を開けました。この研修制度によって、臨床研修指定病院には、大学の医局を介さずに医師が集まる状況が生まれました。

市中病院を中心としたスター型ネットワーク

 「ひとつの大学の医局からしか医師を供給してもらえない」という足かせをはずせば、どの大学から医師が来ていただいてもOK、大学医局人事外の医師でもOK、他の病院への医師の転職も、その反対に他の病院からS病院への医師の就職もOK、また、臨床研修を終えた医師が大学で研究をしたいと思った場合には、どの大学の大学院を選んでもOKということにもなります。
 自らをスター型ネットワークの中心に位置づければ、ひとつの大学の医局からの医師供給が途絶えたとしても、何ら心配する必要はなくなるわけです。


 京都市立病院は自治体病院のひとつで、臨床研修指定病院でもあります。これからの時代は、京都市立病院を「××大学の関連病院」という限られた狭い枠組でとらえるのではなく、京都市立病院自体がスター型ネットワークの中心として機能していくことが求められているのではないでしょうか?