ロータリーのある坂道には、真っ赤に紅葉した街路樹が延々と続いていました。
昨日、ステンドグラスの教室に通っているご近所の方から、ステンドグラスで作った、可愛らしいサンタさんの飾りものをいただきました。
『院内ひろば』第27号 表紙 |
以前、京都市立病院の職員向け広報誌『院内ひろば』の編集を担当していたとき、表紙の言葉として、聖路加国際病院の日野原重明先生から色紙を頂戴したことがありました。その背景には、聖書の物語を描いた、中世のステンドグラスがあればといいなと思っていました。
ちょうどその頃、京都新聞紙上で、「光をあびて」というエッセイが連載されていました。著者の清水伯夫さんはステンドグラス工芸家で、京都に住んでおられました。
ステンドグラスの写真をお借りできないかと思い、連絡をとって清水さんとお会いしました。そして、清水さんがフランスで撮影されたステンドグラスの写真をアレンジして、日野原先生の色紙の周りを飾ることができたのでした。
清水伯夫さんが撮影された、 シャルトル大聖堂のステンドグラス |
ステンドグラスというと教会を連想しますが、聖堂の中にステンドグラスを通して射しこむ光は、どこかしら人の心を癒すような力があるように思われます。
清水さんの連載を読み、お話をうかがっている内に、病院の中にもステンドグラスがあると、患者さんの心を癒すことができるのではないかしら、と考えたことがあります。
『新建築学大系 31病院の設計』(彰国社刊)の中の、「病院建築の特性」という項には、次のような解説が載っています。
「病院の設計は、いろいろな建築の中でも最も難しいものの一つであるとされている。(中略)たとえば、そこには手術に代表される一面非情ともいえる診療行為があり、他方に病苦の苦しみを除き、やすらぎを与えるための細やかな心づかいがなければならない。いうならば、きわめて冷たい側面と暖かみを求める側面との二つを併せもち、しかも両者の間に絶妙な調和を必要とするのである。機能の的確な理解と卓越した創造力をもってして、それは初めて可能になるのである。」
この解説の中の「暖かみを求める側面」として、ステンドグラスを活用できるのではないでしょうか?
病院の中では、照明ひとつを取り上げてみても、二つの側面を考慮していることが分かります。白い蛍光灯がむき出しになっているのは、管理棟の廊下や事務室、医局あたりです。ところが、このむき出しの白色光の照明は、ベッドに仰向けに寝ている患者さんにとっては、けっこうまぶしいものです。
患者さんのベッドサイドや談話室では、間接照明になっていることが多いようです。しかも、照明の色も白色ではなく、オレンジ色の電球色という柔らかい色合いになっています。久保田秀男『患者に選ばれる病院づくり』(じほう)では、雪明かりの障子を設置した病院があることも紹介されていました。
建物というハードは、いったん作ってしまうと、変更はなかなかむずかしいものです。しかし、経験の蓄積は、後になるほど豊かになるはず。現に、京都市立病院でも、北館、本館、新館と時代が新しくなるに従って、アメニティは充実してきているようです。
京都市中央市民病院時代(昭和20年代) |
京都市中央市民病院時代(昭和31年) |
北館完成(昭和49年) |
手前の緑の屋根が外来棟。その後ろが今はなき旧病棟 一番北の北館がこの当時最新の建物(昭和51年) |
新棟(現在の本館)完成(平成4年) 北館との間に、まだ旧病棟が残っています。 |
現在の本館(左上)と北館(右下)の間に、 庭が造られました。今は、この庭の跡地に新館が 建てられています。 |