水曜日に京都市立病院に来ていただいているOn先生は、歯科麻酔専門医の資格をもっておられます。今日、話をしている中で、「医科には障害者を扱う分野ってあるんですか?」と質問をされました。
確かに、聴覚障害者や視覚障害者の方々や精神発達遅滞のある方々も手術を受けに来られます。しかし、それらの方々を特別に扱う、診療科や麻酔科の分野というのはありません。
聴覚障害者の場合には、手話通訳の職員が院内におられるので、麻酔の術前説明などのときには同席してもらっています。文字ボードの読める方だったら、手術室に入室後に文字ボードで伝えたい内容を伝えたりしています。手術室では、みなマスクをしているので、読唇もできませんから、それが唯一のコミュニケーションツールとなる場合もあるのです。
以前、全盲で聾唖という男性の麻酔を担当したことがあります。このときは、コミュニケーションをどうしようかと頭を悩ませました。文字ボードも使えません。唯一のコミュニケーションは、手のひらに文字を書くと分かる患者さんでした。全身麻酔を導入するまでは、手のひらに文字を書くのでよいのですが、覚醒させるときには、肩をたたくなどの合図を送ることを、あらかじめ約束していたように記憶しています。この患者さんの麻酔を経験した後、たとえ外国語で内容が理解できなくても、聞こえてしゃべれる患者さんの方がずっとコミュニケーションがしやすい、と思ったものでした。
いずれにしても、障害をもった患者さんとコミュニケーションをはかるには、健常者に対するよりも、長い時間を必要とします。焦らず、じっくり構える姿勢が肝心のようです。
今日の逸品
嵐山の渡月橋北詰にある、琴きき茶屋の桜もちをご近所の方からいただきました。9月の台風18号の影響で、桂川が氾濫し、付近の土産物屋などが床下浸水して大変でしたが、今ではすっかり復旧して、観光客でにぎわっている様子です。
この琴きき茶屋の桜もちには二種類あります。ひとつは、着色料を使わない白い道明寺もちを、塩漬けされた二枚の桜の葉ではさんだもの。餅の中には餡は入っておらず、食べるとほのかな甘みと、塩味がきいた桜の葉の香りが口の中で溶け合います。もうひとつは、道明寺もちをこしあんで包んだもの。形は、嵐山を型どっているそうです。