2013年10月23日水曜日

病院の黒字はどうしたら実現できるのか?

 病院が利益(黒字)を出す(あるいは赤字を出さない)ためには、どうすればいいのでしょうか?

病院を維持するためには費用がかかります。その大半は、数多くの職員の給与です。その他に、設備を維持するための光熱費や消耗品などの費用がかかります。
 収入はというと、外来患者や入院患者が支払う医療費と医療保険から得られます。しかし、これらがすべて病院の利益となるわけではありません。外来患者や入院患者一人あたりに発生する経費というのがあります。たとえば、手術をすれば、いろんな器械や材料費、高額機器の減価償却費などが必要です。麻酔でも挿管チューブや点滴セットなど、いろいろな道具が必要です。

 これらの関係を図に表すとこんな感じになります。

 オレンジ色の矩形の部分は固定費と呼ばれています。職員の給与は、ここに属します。赤い線は固定費に患者の数に応じて変化する変動費を加えた総費用線です。このふたつはいずれもコストです。青い線で示される部分は収益線で、これは患者数に比例して増加します。
 赤の線と青い線が交わるA点では、総費用線と収益線の高さが等しく、つまり支出と収入が等しくなっています。いわば、トントンと表現される地点です。A点より左に患者数が減ると総費用線が収益線を上まわって赤字になります。A点より右に患者数が増えると、今度は収益線が総費用線を上まわるので、黒字に転ずるわけです。このような赤字と黒字の分かれ目にあたる部分を損益分岐点と呼んでいます。

 このグラフから、経営を黒字にするためにはどうすればよいかが見えてきます。もちろん、患者数がどんどん増えれば問題ないわけですが、患者数は変動します。もしも、患者数が減っても赤字にならない経営体質にしようとするならば、損益分岐点をグラフの左にシフトさせるような方法を工夫すればよいということになります。
 その方法は三つあります。

①固定費を減らす(オレンジのラインを下げる)
 具体的には、一人ひとりの給料を下げるか、いっそ解雇する、ということですね。病院という組織は労働集約型組織といって、サービス業の中でも人件費の占める比率が大きいという特徴があります。だから、必要以上に人を雇うことは収益構造からみて不利になるのです。






②変動費を減らす(赤い線の傾きを小さくする)
 これは、患者一人あたりに発生するコストを下げることです。DPC(診断群分類包括制度)の場合、診断された疾患の治療に対して支払われる医療費が一定なので、クリニカルパス通りに治療して、できるだけ合併症を起こして入院を長引かせないことが重要になるゆえんです。
 これを一人ひとりに還元してみると、たとえば、点滴を一回で入れて留置針を節約する、1枚で事足りるガーゼを2枚も3枚も使わない、という些細なことにまで影響してきます。




③収益線を上げる(青い線の傾きを大きくする)
 これは、患者一人あたりの収入(単価)を上げるということです。外来で紹介患者率を増やそうとか、入院期間を短縮しようとか、7:1看護を導入しようというのは、すべて収益線の傾きを大きくするためのものなのですね。