2013年10月25日金曜日

シェイクスピア劇から学ぶ人生の教訓とは

 ケン・ロビンソンのTEDトークの中で、シェイクスピアに関するジョークを語る部分があります。

 シェイクスピアにも子どもの頃があったなんて考えたことがありますか?
 7歳のシェイクスピアなんて想像できます?私は想像したこともありません。
 でも、たしかに彼にも7歳の頃があったんです。誰かの国語の授業を受けていたんですよ。うっとおしかったでしょうね。「もっと一生懸命やりなさい」とか言われていたんでしょうか。父親がベッドまで引っ張っていって「早く寝ろ」とかシェイクスピアに言ってたんでしょうね。あのウィリアム・シェイクスピアにですよ。「鉛筆を置きなさい。そんな話し方をするんじゃありません。みんな混乱するでしょ」とかね。(TED2006:ケン・ロビンソン「学校教育は創造性を殺してしまっている」より)

 このシェイクスピアが残した戯曲は、今でも世界中で上演され、映画にもされています。セリフの端々に生きていく上での教訓が散りばめられています。
 ビジネスの世界でも活かせる教訓があるのだ、ということを紹介したのが、ノーマン・オーガスチン&ケネス・エーデルマン『古典に学ぶリーダーの掟 最高経営責任者シェイクスピア』(日経BP社)です。

 ビジネスに関する教訓も興味深いのですが、この本のエピローグに、「人生の決算」という章があって、ここにはビジネスだけでなく、人生全般にかかわる問題で、シェイクスピア劇から得られる教訓が取り上げられています。

 シェイクスピア劇では、仕事の成功と人生の幸福の相関関係は弱いようです。登場人物のなかでもっとも不幸な描かれ方をしているのは、実は王様なのです。ヘンリー四世は暗い独白の最後にこう言っています、「王冠をいただく頭には安らぎが訪れることはない」と。
 人生の決算を左右する要因を見失うと、マクベスのような最期を迎えることになってしまいます。
 「おれの人生は黄ばんだ枯れ葉となって風に散るのを待っている。それなのにどうだ、老年にはつきものの栄誉、敬愛、服従、良き友人たちなどなに一つ、おれには期待できそうにもない」

 著者らは、マクベスのような最期を迎えないように備えるために、シェイクスピア劇から得た人生の水準を高める九つの教訓を紹介しています。
 その中でもいちばん大切な教訓がこれです。

教訓:人生の決算で、なによりも大切なのが名誉
 イアーゴーはオセローに言います。「いい評判(名誉)というものは、男にとっても女にとっても魂のいちばん大切な宝石です。盗まれても財布ならたかが金だ — 事は事だが大した事じゃない、私のものがそいつのものになるだけ、どうせ天下の回りものですからね。
 しかし、盗まれたのがいい評判(名誉)だとなると、盗んだやつらには何の得にもならないが、盗まれたほうは大損です」
 『リチャード二世』でモブレーは言います。「このはかない人生がわれわれに与えうる最高の宝とは、斑点のような汚点(しみ)がかつて汚したことのない名声です」。そして、一度ついた汚点はそう簡単には消えません。
 名誉を失えば、あとに何が残るか。『オセロー』でキャシオーは言います。「名誉、名誉、名誉!ああ、おれは名誉をなくしてしまった!いのちより大切なものをなくしてしまった、ここにいるのは畜生同然の残骸だ」