2013年10月2日水曜日

精神安定剤としての80対20の法則

 今日から、2年目研修医のMd先生が約7ヶ月ぶりに麻酔科研修に戻ってこられました。Md先生は、当初の研修計画を変更して、麻酔科研修を選択科目で追加して下さいました。今日は、午前中は自動麻酔記録のオリエンテーションの予定でしたが、Hn先生とともに緊急手術の麻酔についていただき、大活躍されました。
 どうぞよろしくお願いします。
手袋はめて、いざ戦闘準備!

 さて、今から約110年前に、イタリアの経済学者ヴィルフレード・パレートが、「80対20の法則」と、今日呼ばれている経験則を発見しました。

 パレートは19世紀のイギリスにおける所得と資産の分布を調査しました。その結果、所得と資産が一部の人たちに集中していることを発見しました。
 彼は、20%の人口に、所得・総資産の80%が集中していることを見出しました。さらに、この80対20という割合が、時代を問わず、国を問わず、集めたデータを調べた限り、この不均衡パターンが一貫してくり返し現れることに気づいたのでした。
 この「パレートの法則」は、後に洗練されて、ビジネス界で応用されるようになってきました。さらに、この法則は、ビジネスに限らず、さまざまな分野で応用が利くそうのだそうです。

 日々の行動を、この「80対20の法則」にしたがって行えば、生き方そのものが変わる可能性もあるといいます。

 リチャード・コッチという人は、「80対20の法則」に関する本をいくつか書いています。『楽して、儲けて、楽しむ80対20の法則 生活実践篇』(阪急コミュニケーションズ)では、「80対20の法則」を応用して、焦点の法則(絞り込むほど豊かになれる)、進歩の法則(少ない努力で多くの成果をあげられる)というふたつの法則を身につけようと提案しています。

 要は、世の中は不均衡な割合で存在していることに気づいているかどうか、なのです。
 たとえば、本を読むときに、第一ページ目から順に読み進めないと気がすまないという人がいます。でも、たぶんどんな本でも自分がほしい情報の80%は、わずか20%のページに書かれている、と考えれば、その20%だけをしっかり読めばすむはずです。時間と労力の節約になるわけです。
 麻酔で生計を立てようとする場合、手術麻酔ばかりでなく、救急蘇生法から集中治療、ペインに緩和まで、すべてをマスターしなければならない、と考えると大変ですが、「80対20の法則」に従えば、麻酔科のすべての領域の20%をマスターすれば、麻酔科領域の80%の仕事はカバーできるはずです。








 そう考えると、まだ自分の実力が100%でないのに、一人で当直業務に入ったときなどに抱く不安が軽減されるのではないでしょうか。20%の実力しかなかったとしても、80%の対応はできるわけなのですから。残りの20%に対応できる力は、今後の課題として残しておけばよいのです。対応できないかもしれない20%のことに心をくだいていたら、一睡もできなくなってしまうかもしれません。「80対20の法則」は、そういう意味では、精神安定剤ともなるでしょう。





 視点を変えると、これまでに自分が学び、身につけてきた技術の80%は役に立っていない、とも言えるのですが、こういうネガティブな考えに支配されてしまうと、たぶん20%の役に立つ機会も活かせなくなってしまうでしょう。

 幸福の80%は、人生の20%で経験するのです。自分にとって、大事な人、大切な人は、出会った人のうち20%だけなのです。要は、その20%を見逃さないことです。