美しい女性の立ち居振る舞いを形容するときに、「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」という言い方があります。
歩く姿は百合の花 |
ユリの花が歩くわけはないので、風に揺れる様がうつくしいとする説と、歩きながら見ると美しいとする説があるようです。
高浜虚子の俳句に「左右の百合皆動きをり迎ふがに」というのがあるそうですが、虚子が美しい女性の歩く姿のたとえを知って作っていたとしたら、あたかも美人の行き交う中を歩く錯覚をしていたのではないでしょうか?
一年目の研修医の先生方は、昨日から新たなローテーションが始まりました。
麻酔科には、O先生とO先生が来られました。
一番下の屋根瓦になっているO先生(左端) |
O先生は、二年目研修医のK先生に指導され、A部長がスーパーバイザーをする、いわゆる屋根瓦方式で今日の麻酔にのぞんでいました。
麻酔科に来たばかりでしたが、夕方に「もう慣れた?」と聞くと「はいっ!」と元気な声で返事が返ってきました。
若者の適応能力はすごいですね。(あるいは親父対応能力かしら?)
もう一方のO先生は、乳腺外科に興味をもっておられるだけに、麻酔への取り組みも積極的です。
O(右):え〜っと、コーマック・グレードって何かしら? |
今日は、少し挿管がむずかしい症例にあたったようです。
挿管困難の術前の評価法としては、Mallampati法が普及していますが、実際に喉頭展開したときの喉頭蓋と声門の見え方で気管挿管の難易度を示す、Cormack Gradeについては、あまり知られていないようです。(下図参照)
Cormack Grade |
要は、Cormack Grade 1では、声門が見える。2では、披裂軟骨が見える。3では、喉頭蓋だけが見える。4では、喉頭蓋すら見えない。というグレード分けをしています。
この内、Cormack Grade 2であれば、声門の解剖学的な位置は分かるので、声門が見えなくても何とか挿管できます。Cormack Grade 3とか4になるといわゆる挿管困難(difficult airway)で、ファイバーかエアウェイスコープを用いないと挿管できないでしょう。
指導するときに、喉頭展開したときの解剖がよく分かっていないと、「何々が見えますか?」と質問しても答えられないことがあるかもしれません。参考までに、各部の名称を示しておきますね。
Cormack Grade 1の喉頭展開したときの見え方 なかなかこんなにきれいには見えませんので悪しからず |
Tracheal ring:声門
Epiglottis(posterior):喉頭蓋(裏面)
True vocal cord:真声帯
False vocal cord:偽声帯
Aryepiglotic fold:披裂喉頭蓋ヒダ
Posterior cartilages:披裂軟骨群
Interarytenoid notch:披裂間切痕
Pharynx:咽頭(食道入口部)