この浮沈子が沈む理由を、「手でボトルを圧迫したときに、浮きの中の空気が縮んで、浮沈子の中に水が入りこんで重くなるので沈む」と説明されるときがあります。
でも、この説明は誤りです。
浮沈子は浮いています |
ペットボトルを圧迫すると 浮沈子は沈みます |
実際に実験してみると、その通りになりました。
浮沈子が沈んで行くのは、浮沈子の中に水が入りこんで重くなるからではなく、空気が圧縮されることで浮力が小さくなるためなのですね。
そこで問題です。
麻酔器の流量計 赤いのがフロート |
この原理は、先ほどの浮沈子の浮き沈みほど単純ではありません。
麻酔器の流量計のフロートが上下するのを理解するには、ベルヌーイの定理とボイルの法則を理解しなければならないようなのですが、ややこしいので、はしょって説明します。
流量計の途中にフロートがあるために、この部分は、ガスの通り道が狭くなっています。ガスが狭い部分を通ると、圧が下がります。(ベルヌーイの定理)
ガスが広い管から狭い管に移動すると 圧が下がるので、左の水面が上がっています |
さらに、この流量計の筒は、実は円柱形ではなくて、上が開いたラッパ型になっています。このために、フロートをすり抜けたガスはより広い部分に出るために、体積が大きくなって、フロートの前よりも圧が低くなります。(ボイルの法則)
フロートのある部分は、管が狭くなっている とみなすことができます |
結果、フロートの前後では、圧差ができます。流量を増やすと、下からの圧は増えますが、フロートの後の圧も増えています。そして、このフロートの前後の圧差は、常にフロートの重さとつり合っています。このとき、フロートの隙間をすり抜けるガスの流量に応じて、つり合う高さ(実はフロートと筒の間の流通面積)が変化しているのです。
流量計の筒がラッパ型になっていなかったら、 下からの圧が増えるとフロートは飛び出してしまいます ちょうど鉄砲の弾が飛び出すのと同じ原理ですね |