2012年12月26日水曜日

BISモニターを100倍楽しむ方法

きれいな月が出ていましたが、満月まではあと二日。ちょっといびつでした。
 今年は、御用納めの28日が今年最後の満月になります。どうぞ、晴れますように。












 今日の手術室は、穏やかに業務が流れ、何と定時(午後5時15分)前にはすべての手術が終了していました!


さて、今日はBISモニターの話をします。
 これは、脳波計の一種で、全身麻酔中の鎮静度の評価に使われます。BIS値(インデックス)という数値で、40〜60くらいの範囲に調整されていれば、まず十分鎮静されている確率が高いでしょう、ということを教えてくれるモニターです。

 吸入麻酔薬だと、呼気ガスモニター(カプノメータ)を用いて、呼気中の吸入麻酔薬濃度を知ることができます。しかし、完全静脈麻酔(TIVA : Total Intravenous Anesthesia)では、プロポフォールの血中濃度をリアルタイムで知ることができません。TCI(Target Controled Infusion)ポンプといって、患者さんの年齢と体重を入力すると、血中濃度の計算値となるように、ポンプの速度を自動制御してくれる器械がありますが、薬液が必ず血中に入ってターゲットである脳にまで到達しているかどうかはわかりません。だから、BISモニターなどで最終ターゲットである脳の活動をみる必要があるのです。

 現在、京都市立病院麻酔科には、BISモニターが二台あります。研修医の先生方は、BIS値ばかりに目がいっているようですが、BISモニターの画面には、もっといろいろな情報が表示されているのです。


まず、BIS値そのものが信頼できるかどうかが前提ですね。この信頼度を示すのがSQIという数値(画面中央上の方)です。脳波は微弱な電気信号なので、手術中は電気メスなどの干渉を受けます。脳波にアーチファクトが混入して、信頼度が落ちて、SQIが50%以下になると、BIS値が反転表示されます。さらにSQIが十数%になると、数値を表示をしなくなります。
 術中は、電気メスを使用しているときに、SQIが低下する場合が多いようです。

 BIS値は、筋電図の影響も受けます。脳波に筋電図が混入するとBIS値が上昇します。
 だから、BIS値の上昇=鎮静度が浅くなった、とは言えないのです。この筋電図は、リアルタイムでもSQIの下に表示されていますが、トレンドをデュアル・モードで出していると、BIS値の上昇が覚醒によるものか筋電図の混入によるものかが区別できます。(筋電図は、トレンド画面の下の方に細いラインで描かれます)

 最後に、画面の右肩にあるSR値について。
 これは、Suppression Ratioといって、1分間に脳波がフラットになる回数を表示しています。だから、通常この値は0です。これが、5とか6とか、場合によっては二桁の数字を表示しているときは、鎮静度が深すぎる、すなわち麻酔薬が過量であると言えます。

 では、以上を参考にして、明日からBISモニターをもっと活用して下さい。