2013年4月11日木曜日

心電図、黄色はどこに貼ってもいいのだ

 京都市立病院麻酔科では、今年度から、手術中の心電図モニタリングは、三点誘導を基本にすることになりました。(以前は、成人は全例五点誘導を基本としていました)

 術中の心電図をモニター画面に表示する際には、一般にⅡ誘導を表示します。これは、たいていの患者の心臓の電気軸が右肩から左足に向かっているので、P波やQRS群の大きさが一番大きく見えるからです。


 Ⅱ誘導の波形は、次のように定義されています。

 Ⅱ誘導=2/3(aVF  aVR)     ・・・・(1)

 健診で、12誘導心電図をとるときのことを思い出して下さい。
 手足にはカニのハサミのような電極をつけ、胸には6ヶの吸盤電極をつけますね。カニのハサミは、右手が赤、左手が黄、左足が緑、そして右足が黒になっています。この黒電極というのが、アースといって、この電位をゼロにするという取り決めになっているのです。この黒電極の電位と右手につけた電極の電位との差がaVR。そして、黒電極の電位と左足につけた電極の電位との差がaVFです。
和田敬『新しい心電図とその解説』(南山堂)より

 手術室で使う心電図の三点誘導の電極には、アースとなるべき黒電極がありません。なのに、Ⅱ誘導の波形は画面に出ています。これはなぜでしょう?

 実は、空いているもうひとつの誘導(aVLにあたります)がアースの役目を果たしているのです。aVLをアースにすると上の(1)式は、次のようになります。

Ⅱ誘導=2/3[ (aVF − aVL)−(aVR − aVL)]
             =2/3(aVF − aVLaVR + aVL)
             =2/3(aVF − aVR

 つまり、三点のうちアースにした電極の電位は関係なくなってしまうのです。

 だから、モニター上にⅡ誘導を表示する限りにおいては、アースの役目を果たしている黄色電極はどこに貼ってもよい、ということになるのです。

 さて、今日は、ナースのYさんが産休入り前の最後の出勤日でした。予定日は6月の始めです。一人目が女の子で、今度は男の子だそうです。
 麻酔科にもご挨拶にみえて、鼓月の千寿せんべいをいただきました。ありがとうございました。

 無事に元気な男の子が生まれますように。


















 また、新たに仲間に加わった専攻医、研修医の先生方も交えて、今年度の勉強会が今日から始まりました。Clinical Anesthesia Procedures of the Massachusetts General Hospital  (Eighth Edition)をテキストにして、この一年間でとにかくこの一冊を読み通そうという予定を立てています。
 第一回目の今日は、専攻医頭のK先生がチューターとなって、第1章のEvaluating  the Patient Before Anesthesiaを読みました。