京都市立病院の手術室BGMでも、クラシックに交じってジャズが流れることがあります。ジャズが流れるとなぜかお酒がほしくなる、というナースがいましたが、ジャズとアルコールは相性が良いのでしょうね。
手術室BGMでは、ドラムスや唄が入った音楽は合いません。気が散らないような音楽が適しています。かといって、一時もてはやされた、アルファ波ミュージックという環境音楽のようなものは、眠気を誘うので、もう少し刺激のある音楽の方がよさそうです。と悩んで選いんでいくと、ジャズの中で手術室BGMとして使えるものは限られてきます。
日ごろ手術室で流しているジャズは、次のようなラインナップです。
Keith Jarrett "The Melody At Night With You" |
キース・ジャレットのソロ・ピアノ「The Melody At Night With You」。
彼のソロピアノは、「ケルン・コンサート」が有名ですが、これはライブなので、拍手の音が入るし、即興のメロディを考えるために、冗長な演奏の部分があったりするので、退屈な部分もありますから、手術室BGMには適しません。
Charlie Haden & Pat Metheny "beyond the Missouri Sky" |
パット・メセニーのギターも手術室に合います。「beyond the Missouri Sky」は、ベーシストのチャーリー・ヘイデンとのデュオです。
BGMで流すと、ベースの音はほとんど聞こえなくなってしまうのが残念ですが…
このアルバムの中の「Cinema Paradiso (love theme)」(ニューシネマパラダイス 愛のテーマ)は、数ある編曲の中でも秀逸です。
Jean-Yves Thibaudet "Conversations with bill evans" |
ピアニストのジャン=イヴ・ティボーデは、クラシックのピアノ奏者です。その彼が、ソロで、ジャズピアニストのビルエバンスの曲をカバーしています。
ジャズ畑のピアニストとは、また違った味わいがあります。
アルバムタイトルの「Conversations with bill evans」というのは、ビル・エバンス自身のアルバム「Conversations With Myself」のパロディですね。ビル・エバンスの方は、自らのピアノの多重録音によるインタープレイという実験的作品です。
Stuttgart Chanber Orchestra, Kalman Olah, Mini Schulz J.S. Bach "Goldberg Variations" |
バッハの作品は、ジャック・ルーシェ・トリオ以来、よくジャズにアレンジされています。
これは、バッハのゴルトベルク変奏曲(アリアと30の変奏曲)を、室内楽とジャズピアノソロおよびピアノとベースとのデュオで、交互に演奏しています。
バッハの旋律の間にジャズのフレーズが入っても、いっこうに違和感を感じさせない仕上がりになっています。
手術室のBGMは、モーツアルトを中心としたクラシックが主体ですが、時おりアクセントにジャズを流しています。全身麻酔の患者さんは、導入までのほんのひとときしか音楽を聴けませんが、少しでも気分が落ち着けたら音楽の効用あり、ですね。