2013年8月27日火曜日

Think Simple

 ケン・シーガル氏は、ネクスト社とアップル社を通して、スティーブ・ジョブズと一緒に10年以上もいっしょに仕事をしてきたことが、いちばん幸運だったと言っています。

 彼は、クリエイティブ・ディレクターとして、ジョブズの下で働き、ジョブズが要求する難題に応えてきました。そして、ジョブズの死後に書いた本が『Think Simple アップルを生みだす熱狂的哲学』(NHK出版 2012年)でした。iPhoneやiPadのシンプルなデザインを生みだすまでの苦労から得た教訓が述べられています。

 物事を複雑にしようとする人々は、複雑なやり方の方がどこか利口に見えるのだと信じているか、信じこまされている。

 シンプルさはたんなる目標ではなく、スキルだということを理解してもらいたい。その力をうまく利用するためには、扱い方を学ばなければならない。それには練習が必要となる。そして、ここがむずかしいところだが、皮肉にも、シンプルさのスキルを身につけるのは容易(シンプル)ではないのだ。

 少人数の法則:プロジェクトの成果の質は、そこにかかわる人間の多さに反比例する。言いかえれば、参加者が多ければ多いほど、そこからいいものが生みだされるチャンスは減るということ。

 すぐれたアイデアにはある程度のリスクがつきものだ。欠点がひとつやふたつあるのは当然で、すぐれたアイデアとはそれを補ってあまりあるもののはずだ。

 何かができない理由はいつでも1000はあるが、クリエイティブな思考を使って回避できないものはそのうちの数個にすぎない。

 シンプルな考えが常にすぐれたアイデアとは限らない。肝心なのはクオリティだ。もしも、新鮮で説得力のあるアイデアがあって、それにシンプルさの原則を適用したならば、あなたはすばらしい高みにまで登ることができる。だが、悪いアイデアをどれだけシンプルにしても、悪いアイデアには変わりない。

 ざっと目についた箇所を抜き書きするだけでも、示唆に富んだ言葉であふれています。ジョブズの下で鍛えられた人物ならではの言葉でしょうね。
日経デザイン編『アップルのデザイン
ジョブズは”究極”をどう生みだしたのか』
(日経BP社)

 シンプルさの対極にあるのが、官僚主義でしょうか?実行する前の書類提出、決裁や会議等の手続きの煩雑さ、仕事を細分化して職員だけが増殖していく組織、ミスをおかさないことを至上目的として、決められた枠をはずれることをおそれる体質(究極は、何も行動を起こさないこと)等々、ジョブズから見ればあきれるような世界でしょうね。

 アインシュタインの言葉だとされているものに、次のような言葉があります。
    Everything should be made as simple as possible, but not simpler.
 (あらゆることはできる限りシンプルに仕上げなければならない。でも単純すぎない程度に。)