2013年9月1日日曜日

壊れ窓理論とは何か?

 朝から曇りで、小雨が降っていましたが、一瞬、ほんの数十秒間だけ、雲間から朝日がさしました。ちょうどそのとき、朝刊を取りに外に出て、西の空にきれいな虹がかかっているのを見ることができました。

よく見ると、いちばん内側の紫色の下にも、白っぽい帯が見えていて、虹全体が輝いているように見えました。
 電線のかからない位置から見ようと移動する間に、朝日はふたたび厚い雲にはばまれて、虹は見えなくなってしまいました。


 昼間に待ち合わせ時間の調整に入った西院のコーヒーショップは、これが初めての利用でした。店は最近できたばかりで、塗装も明るい感じでした。レジの女店員も明るくあいさつをしてくれて、「今からお淹れしますからしばらくお待ち下さい」と言われて、「2」と番号の着いた立て札を渡されました。窓際の席に座って、読みかけていた本を開いてコーヒーを待っていました。BGMには、ちょうどイパネマの娘が流れていました。
 やがて白いソーサーにのせられて、磁器製のカップに入ったコーヒーが運ばれてきました。そのカップを持ち上げたとき、カップの底が濡れていたのか、ソーサーに水が少し残りました。それを見たとき、ぼくの中で、この店に対する評価が2ポイントほど落ちてしまいました。
 ホットコーヒーをカップに注ぐときには、コーヒーがさめないように湯にカップをつけているのですが、これを取りだしたときには濡れたカップを十分に布巾で拭くものです。この拭き取りが十分でなかったために、カップの底に水が残ってしまったのでしょう。
 ささいなことですが、ぼくが店に対していだいたネガティブな印象は無視できませんでした。
 このささいなことが気になると、入り口のドアが開くたびに鳴るチャイムの電子音や、電子レンジだか何だかの時間を知らせるブザーの高周波、BGMの裏側で聞こえる小鳥のさえずりの効果音までうっとおしく思えてきました。
 そして思ったのが、たぶん、ぼくはこの店には二度と入らないだろうな、ということでした。

 「壊れ窓理論」というのがあります。もともとは犯罪学の分野で唱えられた理論だそうです。
 「一枚の割れた窓のようなちょっとしたほころびが、毎日そこを通りかかる人々に向かって強いシグナルを発します。壊れたまま修理されなければ、建物の所有者はそれに気づいていないか、目をつぶっているという意味にとられます。ということは、近辺では窃盗や破壊行為や暴行など、もっと深刻な犯罪までも見逃されているのかもしれない。少なくともだれも目をくばっていないのは明らかだ。ということから、どんどん犯罪が増えていく。」というのが「壊れ窓理論」の核心です。
 かつて、ニューヨーク市長となったルドルフ・ジュリアーニが地下鉄の落書きを一掃するという運動を始めて、小さな犯罪を厳しく取り締まることによって、殺人、暴行、強盗などの凶悪犯罪を激減させたのは、「壊れ窓理論」の応用であったと言えます。



 マイケル・レヴィンは犯罪学が解き明かすビジネスの黄金律「壊れ窓理論」の経営学』(光文社)の中で、「些細なことがビジネスの成否を大きく分けるというのは、どれだけ強調しても足りない。それどころか小さければ小さいほど重要だ」と指摘しています。

 「壊れ窓理論」が示しているのは、人々の印象が持っている力の大きさです。
 「ビジネスにおいて、印象はさらに重要」だとレヴィン氏は続けます。「顧客(あるいは将来の顧客)があなたの会社に対していだく印象は、成功と失敗とを分ける決定的な要素だ。まちがいをひとつ犯せば、態度の悪い従業員がひとりいれば、一度でも顧客に不快な思いをさせて帰してしまえば、破滅を招くのである。」




 ことわざに、「善意は十分の一しか伝わらないが、悪意は十倍になって伝わる」というのがありますが、たとえ悪意でなくても、些細なことであっても、良くない印象は、会社全体の印象を悪くする場合があるのです。これは病院でも同じことでしょう。
 病院での患者さんからのクレームの内容を見てみると、「(職員が)あいさつをしなかった」「(医者が)顔を見て話をしてくれなかった」という「些細な」ものも目立ちます。忙しくて、業務に追われる病院職員は、「なぜそんな些細なことにこだわるのか」と疑問をもつかもしれませんが、案外、この些細なことが、病院全体の印象を形作ってしまいかねないのです。

 壊れ窓は割れる前に手を打つに越したことはない。つまり、いちばん望ましいのは、問題が表面化しないうちに対処することです。しかし、もしもほころびが生じてしまったら、取るべき行動はただひとつ、ただちに対処すること。見た目をつくろったりせず、一も二もなく修理すべきなのだ、とレヴィン氏は強調しています。ひびの入った窓に粘着テープを貼ればガラスが砕けることはないだろうが、見た目の印象は割れた窓と何ら変わりがない。修理は迅速かつ完璧でなくてはならない、のだそうです。

今日の逸品

Primavera
北野白梅町店
嵐電の北野白梅町駅のすぐそばにあるPrimaveraというイタリア料理店のフェットチーネのペスカトーレ。最近、手打ちパスタをメニューに加え、すべてのスパゲッティが手打ちフェットチーネで作ってもらえます。
手打ちパスタのペスカトーレ

バイトの店員さんが
1年目研修医のIz先生にそっくりでした!