2013年12月4日水曜日

巷(ちまた)で「抜去」は通じません

 以前、「抜去する」という言葉が一般人には通じないということを、医療関係者でない方の書かれた闘病記で読んだときに、軽いショックを受けました。

 抜去という言葉は、医療業界でしか通用しない「業界用語」だったようです。広辞苑にも載っていません。
 一般に、医療における業界用語というと、たとえば「ステる(死ぬこと。独語のsterbenから)」とか「ロイコ(白血球のこと。これも独語のLeukozyteから)」「エント(退院する。やはり独語のentlassenから)」などです。これらは、ドイツ語を略した言い方で、どちらかというと「隠語」に近いかもしれません。
 でも、「抜去」というのはどうやら造語のようですね。



 一方、業界用語ではないのでしょうが、医療の世界だけの慣用読みをしている漢字があります。
 たとえば、「腔」。これは、通常「こう」と読みますが、何故か医療業界では、「くう」と読んでいます。「口腔(こうくう)」「鼻腔(びくう)」「腹腔(ふっくう)」などですね。でも、生物界では、「腔腸動物」はけっして「くうちょうどうぶつ」とは読みません。


 また、学生時代の解剖学の講義で習った、舌の表面にあるキノコ状のフサフサは「茸状乳頭」ですが、これは確か「じじょうにゅうとう」と読んだ記憶があります。でも、世間一般では、「茸」という字は、「キノコ」か「じょう」としか読めません。「じ」と読ませるのは、医学用語だけです。

 これらは、業界用語というよりは、慣用読みに属するものでしょうね。



 一般の言葉でも、たとえば、「情緒」「消耗」「貼付」「攪拌」は、ふだんどう読んでいるでしょうか?それぞれ、「じょうちょ」「しょうもう」「てんぷ」「かくはん」と読むことが多いのではないでしょうか?実は、これらの正しい読み方は、それぞれ「じょうしょ」「しょうこう」「ちょうふ」「こうはん」なのです。
 今では、慣用読みの方が一般的になっているので、漢字の読み方で慣用読みを書いても間違いではありません。