資産形成=(収入−支出)+利回り×資産
これだけです。
理数系学科を卒業後、欧米の研究機関で計算科学の分野で博士号を取得。欧米の大学院でしばらく教職に就いた後に、某外資系投資銀行に就職したという経歴をもつ藤沢数希さんが書いた『なぜ投資のプロはサルに負けるのか? あるいは、お金持ちになれるたったひとつのクールなやり方』[ダイヤモンド社]という本に出ています。
もう少し具体的に書くと、
一年間で増える財産=(年間総収入−年間総支出)+年率運用利回り×運用資産
となるのだそうです。
要するに、お金持ちになるためには、①収入を増やすか、②支出を減らすか、③利回りを上げて投資からの収入を増やすという、三つの方法しかないのです。
医師の場合、収入は世間一般の労働者の平均からすれば、高収入です。でも、外車を乗り回したり、海外旅行を重ねたりすれば、それなりに財産は減ってしまいます。給料のほとんどを銀行に預けているのであれば、元本が補償されるだけで、何年経っても「増えた」という実感がないのが昨今の金利事情です。
もっとお金を増やしたいという欲に駆られると、何かに投資をしようという誘惑が働き、好成績をあげている投資信託を購入したり、有望な会社の株式を購入したり、マンションを購入して大家になって、家賃収入を得たりする、という行動を起こすこともあるようです。
しかし、本当に儲かるのであれば、株や投資信託を薦めるファンド・マネジャー自身が、なぜ自らそれらを購入しないのでしょうか?家賃で稼げるのだったら、なぜ勧誘するセールスマン自身がそのマンションを買わないのでしょうか?
藤沢さんは、「日本国民は、学校から資本主義や市場経済の仕組みについて何も学ばないまま、卒業と同時に市場原理が支配する弱肉強食のジャングルに放り出されるのです」と言い、「資本主義の世の中を生き抜くには、最低限のファイナンシャル・リテラシー(お金の知識)をもつことが必要だ」と警告を発しています。
この本は、2009年度の 「日本タイトルだけ大賞」を受賞していますが、 内容もなかなか面白かったです。 |
お金の知識を持たない人々を「カモ」にして、その人たちからお金を巻き上げる社会の仕組みを、グリム童話のパロディで描いたのが、マネー・ヘッタ・チャン『ヘッテルとフエーテル 本当に残酷なマネー版グリム童話』[経済界]です。著者のマネー・ヘッタ・チャンは、「むかしから、色んな手口で大勢の人が騙されていて、それは私たちも例外じゃなく、いともかんたんにだまされること。だから儲け話を聞いたら、昔聞いた物語を思い出して、そんな美味しい話はないと判断できる寓話がいま何よりも必要だ、そう思って書き上げ」たのだそうです。
お金持ちになる、もうひとつのヒントがあります。それは、複利です。
先の方程式の「利回り×資産」の部分の利回りを単利にするのか複利にするのかで、何年か後には、大きな差になるのです。たとえば、元本100万円で、年率10%の単利で増やした場合は、30年後には400万円になりますが、これを同じく年率10%の複利で増やした場合には、30年後には1745万円になっているのです。その差は、1345万円にもなります。
赤線が単利の増え方。黒線が複利の増え方。 |
アインシュタインは、かつてこう言ったそうです。
「人間の発明した仕組みでもっとも驚くべきものは複利である。」
したがって、資産は、複利で運用すべきなのですね。