2013年6月28日金曜日

たかが挿管、されど挿管

 挿管困難は、麻酔科医が遭遇するトラブルの中でも、できるだけ避けたい上位三位には確実に入っているでしょう。

 ASA(アメリカ麻酔科学会)の基準では、10分以内に挿管できないものを「挿管困難(difficult airway)」と定義しています。今日は、挿管までに40分近く要した症例を経験しました。Mac 3の喉頭鏡では、ようやく喉頭蓋が確認できるのみ。マッコイ喉頭鏡を使っても披裂軟骨が少し見えるだけ。エアウェイスコープを挿入しても、声門を確認する所まではブレードを進められず、エアウェイスコープとブジーを使って、挿管できたかと思いきや、食道挿管になってしまいました。
エアウェイスコープがあると、
最初からファイバーを入れるより
オリエンテーションがつけやすい

 最終的に、ファイバー挿管を行うことにしましたが、エアウェイスコープガイド下に喉頭蓋の下のすき間へファイバーを進めて、気管にファイバーが届いたことを確認してから気管内チューブを進めて、ようやく挿管を終えました。専攻医2人と専門医3人がかりでの挿管でした。

 挿管困難の頻度は、文献によってまちまちで、1%〜4%という開きがあります。少なく見積もっても二週間に一度は、当院の手術室で遭遇する可能性があるということになります。
 でも、最近では、エアウェイスコープやラリンジアルマスクが普及してきたために、従来の挿管困難症例が問題なく気道管理されている例が増えてきていることでしょう。ぼくも、以前に二度手術を受けた患者さんが、一度目はラリンジアルマスクで難なく麻酔ができていたのに、二度目が挿管困難であったという患者さんがおられました。二度目は救急救命士の気管挿管の同意を得ていたために、挿管しようとしたところ、挿管困難が判明した症例でした。
白ひげは挿管困難だろうか?
アゴは長いが首は短そう…


 挿管困難だった患者さんには、術後回診のときに、「あなたは挿管困難でした。気管に管を入れにくいので、次に全身麻酔で手術を受けるときは、必ず麻酔科医のいる病院で受け、挿管がむずかしいと言われたことを、術前に麻酔科医に告げて下さいね」と伝えています。

H先生、
ありがとうございました。
今日は、毎週金曜日に応援に来て下さっていたH先生が最後の出勤日だったので、菓子職人のケーキでねぎらいました。四月からの新手術室立ち上げの中、軌道に乗るまでご協力いただいてありがとうございました。7月からは、京都市内の別の病院に常勤医として赴任される予定です。



 アマテラスNさんも今日が学外実習最後の日。みんなから「国試がんばってね」とか「市立病院で一緒に仕事ができますように」と言われて帰って行かれました。
N先生の最終日はM先生とともに