2013年6月16日日曜日

デカルトダイバーと流量計のナゾ

 デカルトダイバー(Cartesian diver)とは、日本語で浮沈子のこと。水を満たしたペットボトルの中に、空気が入ったスポイト状の浮きを入れ、ボトルを手で圧迫すると、その浮きが沈んで行き、手を離すとまた浮き上がってくるというオモチャです。
 
 この浮沈子が沈む理由を、「手でボトルを圧迫したときに、浮きの中の空気が縮んで、浮沈子の中に水が入りこんで重くなるので沈む」と説明されるときがあります。
 でも、この説明は誤りです。

浮沈子は浮いています
ペットボトルを圧迫すると
浮沈子は沈みます
  中に水が入りこまないような浮沈子、たとえば、サランラップに空気を含ませて、風船状にまとめ、釘でおもりをつけたような浮沈子を作ります。これなら、サランラップの中には、水は入ってきません。しかし、ペットボトルの中に、この浮沈子を入れて、ボトルを手で圧迫すると、やはり沈んで行くはずです。





実際に実験してみると、その通りになりました。




 浮沈子が沈んで行くのは、浮沈子の中に水が入りこんで重くなるからではなく、空気が圧縮されることで浮力が小さくなるためなのですね。

 そこで問題です。

麻酔器の流量計
赤いのがフロート
麻酔器には、流量計というのがついています。この流量計の中には、流量を示すフロートがあります。流量を増やすとフロートが浮き上がり、流量を減らすとフロートは下がります。では、このフロートは、流量を増減するとなぜ上下するのでしょうか?

 この原理は、先ほどの浮沈子の浮き沈みほど単純ではありません。
 麻酔器の流量計のフロートが上下するのを理解するには、ベルヌーイの定理とボイルの法則を理解しなければならないようなのですが、ややこしいので、はしょって説明します。

 流量計の途中にフロートがあるために、この部分は、ガスの通り道が狭くなっています。ガスが狭い部分を通ると、圧が下がります。(ベルヌーイの定理)
ガスが広い管から狭い管に移動すると
圧が下がるので、左の水面が上がっています

 さらに、この流量計の筒は、実は円柱形ではなくて、上が開いたラッパ型になっています。このために、フロートをすり抜けたガスはより広い部分に出るために、体積が大きくなって、フロートの前よりも圧が低くなります。(ボイルの法則)
フロートのある部分は、管が狭くなっている
とみなすことができます

 結果、フロートの前後では、圧差ができます。流量を増やすと、下からの圧は増えますが、フロートの後の圧も増えています。そして、このフロートの前後の圧差は、常にフロートの重さとつり合っています。このとき、フロートの隙間をすり抜けるガスの流量に応じて、つり合う高さ(実はフロートと筒の間の流通面積)が変化しているのです。
流量計の筒がラッパ型になっていなかったら、
下からの圧が増えるとフロートは飛び出してしまいます
ちょうど鉄砲の弾が飛び出すのと同じ原理ですね