2013年1月4日金曜日

太りすぎは麻酔によくない

 今日は、仕事始め。
 麻酔科管理の予定手術はなく、麻酔科勉強会を午後から行いました。
去年度の麻酔科専門医試験問題


 去年使っていた、『麻酔科問題集』は、ほぼめぼしい章を解き尽くしたので、今年からは、麻酔科専門医認定試験問題を使っての勉強会を始めることになりました。
 新年の第一弾は、2012年度の『第51回麻酔科専門医認定筆記試験問題』を用いることになりました。さすがに難しい問題が多くて、議論しながら進めるとなかなか前に進めません。

 試験問題(A)の第1問は、肥満患者に関する問題でした。肥満患者では、胃液の pHは低く(つまりより酸性に傾いていて)、機能的残気量は減少し、動脈血酸素分圧は低下している、というのが答えでした。しかし、麻酔以前に問題となるのは、実体重そのものなのです。






積載許容体重200kgのドイツ製ベッド
かつて、京都市立病院の手術室にあった日本製の手術用ベッドは、患者の体重許容量が150kg程度までのものしかありませんでした。
 ところが、あるとき、体重が161kgの患者さんの手術をしなければならないことになりました。幸い、急ぎの手術ではなかったので、これを機会に積載許容量のより大きなドイツ製ベッドを購入することになりました。これだと仰臥位で200kgまでの体重を支えることができます。





 ところが、それから何年か後に、168 cm / 184 kg (BMI=65.2 kg・cm﹣²)という体型の患者さんの手術を受けることになりました。体重だけならひとつのベッドで何とか耐えられるのですが、普通のベッドだと横幅が足りず、患者さんの体がはみだしてしまいます。
 そこで、工夫したのが、同型のベッドを二つ併列させて一つのベッドとして使用する方法でした。念のため、合計体重が184kg近くなるようにナースのボランティアの協力を得て、安全確認も行い、手術は無事に終えることができました。


推定合計体重184kgで安全を確認


標準体重100kg超えの肥満患者の麻酔風景
『ユーモア麻酔学』より
肥満先進国のアメリカでは、こうした病的肥満の割合が多いようです。
 『ユーモア麻酔学』絶版(総合医学社)という本には、「極端な肥満(理想体重を50kg以上もこえるもの)は、医師やナースにとっても大問題である。100kgを大きくこえるような患者は、麻酔するだけでも大変である。呼吸系や循環系の負担が大きいからである」という記述とともに、右の写真が載っていました。