2013年1月3日木曜日

麻酔科医を悩ます瞳たち

 今日、1月3日は「瞳の日」。1(ひと)3(み)の語呂合わせで、眼鏡・コンタクトレンズ協会が制定したのだそうです。

Guedelの全身麻酔の深度別臨床兆候
さて、この瞳、かつては麻酔深度を判断するために使われていました。
 Guedelは、エーテル麻酔の麻酔深度を無痛期、興奮期、手術期、延髄麻痺期という4期に分け、さらに第3期(手術期)を第1相から第4相に分けました。このときの指標とされたのが瞳つまり瞳孔でした。
 瞳孔(pupil)の縮瞳、散瞳の程度、眼球運動、結膜反射、対光反射など眼の反射などを用いて細かく分類しました。
 しかし、このGuedelの麻酔深度表は、新しい吸入麻酔薬や静脈麻酔薬では当てはまらないこともあり、現在ではほとんど使われていません。



 しかしながら、麻酔中の瞳はしばしば麻酔科医を悩ますものです。

 大量出血などで低血圧が続いたり、心停止を起こしたりすると、瞳孔が散大していないか、対光反射があるかどうか、などがとても気になります。

 瞳孔は、通常大きさに左右差はないのですが、ときとして左右の瞳孔の大きさに差が出る(瞳孔不同)ことがあります。一般に瞳孔不同は、脳出血や脳梗塞などでも起こるとされています。
 麻酔導入時には、挿管刺激によって、ときおり血圧が上昇することがあります。麻酔導入後に瞳孔を確認しますが、導入時に血圧が上昇した症例で瞳孔不同を発見すると、脳出血でも起こったのではないかとギョッとします。

 
Adie瞳孔:瞳孔に左右差があります
ところが、脳出血に関係なく瞳孔不同になっている方がいます。Adie瞳孔と呼ばれるもので、これは普段から瞳孔に左右差があります。






 だまし絵で有名なオランダの画家M.C.エッシャーの絵に「Eye」という絵があります。この絵では、瞳の中に、何とドクロが描かれています。
 麻酔導入後に、こんな瞳を見たら、さすがにドキッとするでしょうね。

M.C.エッシャー「眼」
瞳の中にドクロが映っています