だとすると、今の日本の若者は、自分のことを不幸に思っているのではないか、と「大人」たちは考えてしまいそうです。
ところが、今の日本の若者たちは、案外、自分たちのことを「幸せだ」と感じているらしい、と古市憲寿さんは分析しています。
古市さんは、内閣府の「国民生活に関する世論調査」のデータを引用して、約七割の若者たちは、自分たちのことを幸せだと感じていると述べました。
しかし、一方では、同じ調査の中で、「日ごろの生活の中で、悩みや不安を感じているか」という設問に対しては、二〇代の63.1%が悩みや不安を感じている(2010年の調査)と答えています。
古市憲寿さんは26歳のときに『絶望の国の幸福な若者たち』[講談社]という本を書き、若者による若者論を展開しました。そこで明らかになった日本の若者像は、「将来は不安だけど、今の身近な生活にはけっこう満足している」というものでした。
そして、今の若者が生活で安心できるベースとなるものは、キーワードで言うと、「仲間」だと言います。たとえ、劣悪な労働環境にいて経済的な不満があっても、将来に漠然とした不安があっても、仲間がいるコミュニティにいれば癒され安心できる、というのが今の若者の考え方なのだそうです。
この、仲間がいるコミュニティを、原田曜平さん(33歳)は「新村社会」と呼びました。原田さんは、「携帯電話(ケータイ)をきっかけに村社会的な人間関係が若者の間に復活した」と分析しました。(原田曜平『近頃の若者はなぜダメなのか 携帯世代と「村社会」』[光文社新書])
ケータイでつながった「新村社会」は、規模としてはかつての村社会よりはずっと広範囲で大きいのですが、昔のムラと同様、「掟(おきて)」があるのだそうです。
・愛想笑いを絶やしてはいけない
・弱っている村人を励まさなくてはいけない
・一体感を演出しなくてはいけない
・会話を途切らせてはいけない
・共通話題をつくりださないといけない
・「正しいこと」より「空気」に従わなくてはいけない
・コンプレックスを隠さなくてはいけない
・「だよね会話」をしなくてはいけない
・恋人と別れてはいけない
これらの「掟」を読むと息詰まりそうですが、若者たちは無難にこなしているようです。
「仲間」で作る村社会の中で生きることで、昔の若者が気にかけていた「世間」という存在が消滅した、と古市さんは述べています。若者は、仲間の内で「承認欲求」が満たされていれば、「世間の目」を気にすることなく、満足して生活ができるのだそうです。
若者の間ではフェイスブックが流行しています。これも、あるいはフェイスブック村社会の「仲間」たちに、「いいね!」ボタンを押してもらうことで、自分がムラに受け容れられているという安心感を手に入れたいという心理が原動力となっているのかもしれませんね。
「仲間」という言葉で思い浮かべるのが、ONE PIECE。 この漫画が若者に人気があるのも、「仲間」のコミュニティを守る、 というルフィの姿勢があるからかもしれませんね。 |