2014年1月1日水曜日

グリアはサングリアの親ではないのだ

 あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願い申し上げます。

 寝坊をしてしまったので、遅めの初日の出を拝むことになってしまいました。

 スペインに、赤ワインをソーダやオレンジジュースで割って、レモンやリンゴ、バナナ、オレンジなどの果物を一口大に切ったものを浸し、シナモンや砂糖などで味つけをした、サングリアという飲み物があります。
 一方、脳の中には、グリアと呼ばれる細胞群が存在しています。日本語で表現するとサングリアと名前が似ているのですが、脳の中のグリア(glial cell)は、サングリア(sangria)とは何の関係もありません。

 学生の頃に講義を聞いたときに受けたグリア細胞に対する印象は、脳の中にけっこうな量があるが、不活性でとくに重要な働きをしていない、単なる支持細胞である、といったイメージでした。

 ところが、20世紀の終わり頃から、このグリア細胞が注目されだしてきました。神経細胞が電気的な興奮によって情報を伝えているのに対して、グリア細胞は、主にカルシウムイオンの流入によって情報を伝播していることが分かって来ました。そして、最近では、神経細胞が情報を伝達するシナプスと呼ばれる部分を、グリア細胞(この場合はアストロサイトです)が取り巻いていて、ひとつの神経細胞から別の神経細胞に情報が伝達されるときに、グリア細胞が関与していることも明らかになってきたようです。

 つまり、グリア細胞というのは、だまって神経細胞たちを支えているだけの大人しい細胞ではなくて、神経細胞たちとやりとりをしている、けっこうアクティブな細胞だったのです。
 どうやら、彼らの情報交換の実態を測定する手段を、最近まで私たちがもち合わせていなかっただけだったようです。

 今後、このグリア細胞が脳の活動において注目されてきそうな予感がするのは、ひょっとしたら、彼らの活動が「意識」と関与しているかもしれないと考えられるからなのです。
 東北大学の松井広先生は、「心の状態や活動を左右する源は、同じ灰色の脳を共有する、もう1つの細胞集団、グリア細胞にあるのではないか」という期待をもっていて、今後の研究成果いかんでは、「この世の見方をひっくり返せるかもしれない」とわくわくしているそうです。(松井広:心に占めるグリア細胞の役割 光操作技術のもたらすパラダイム・シフト. 実験医学 Vol. 31 No. 11 (7月号) 2013

 「意識」というのはつかみどころのないもので、はっきり定義しにくいのですが、こんな風に考えてみました。

 外界からのインプット(感覚等)を受けて、ヒトが外界に対してアウトプット(発言・行動等)をする際には、中枢神経系を介します。この中枢神経系において、アウトプットのあり方に多彩な修飾を与えているのが、生まれたときから現時点に至るまでに形成された、「意識の総体」なのではないでしょうか。その「意識の総体」の中には、遺伝的素因・教育・環境・文化・宗教・習慣・人間関係・疲労度・栄養状態など、さまざまな要素が含まれている。これら「意識の総体」は、個々人によって千差万別であるので、同じ外界からのインプットに対してもアウトプットされるものが違ってくるのだ、とは言えないでしょうか?
一コマ目「おはよう!」

 二コマ漫画で考えてみましょう。

「おはよう」とあいさつするという一コマ目に対して、相手の「意識の総体」によって、二コマ目はいろんな状況が出てきそうです。











二コマ目のバリエーション






 この「意識の総体」という部分に、グリア細胞が関与しているとしたら……これは将来の研究対象として、とても興味のある分野ではないでしょうか?

 今年は、グリアから目が離せそうにありませんね。