2013年11月9日土曜日

赤くなるのはもみじばかりではないのだ

 桂坂野鳥遊園まで散歩をしました。もみじの紅葉は、あと一歩といった感じの色づき方でした。
野鳥遊園の入り口は萱葺きの門














 紅葉が鮮やかになるには、寒冷と晴天が必要だと、学生のころ生物学の授業で聞いた覚えがあります。今年は、10月が暖かかったので、色づく時期が少し遅れているのかもしれませんね。
ところどころは、いい色になってきています

 外科の開腹術の全身麻酔中などに、時おり遭遇する現象に、腸間膜牽引症候群(Mesenteric Traction Syndrome)というのがあります。腹部の操作をしているときに、頻脈、低血圧となって、ふと見ると、患者さんの顔が真っ赤になっている状態です。
 この現象は、麻酔科関係のブログや研修医の先生方が使っている麻酔科のマニュアル本などでも紹介されているので、ご存じの方も多いと思います。一度遭遇すると、「あぁ、これだな」と気づかれます。放っておいても自然に戻ることが多いのですが、初めて見ると、顔が赤おにのようになっているので、けっこうびっくりするものです。

この池の向こう岸にはカワセミが訪れます

 もうひとつ顔面紅潮を引き起こすものに、アトロピンがあります。アトロピンは麻酔中に、迷走神経反射が疑われたり、脊麻時に副交感神経が優位になって腸蠕動が亢進して嘔気が出現した場合などに、しばしば使われる薬剤です。
 アトロピンは、副交感神経遮断薬なので、血管は収縮するような印象がありますが、なぜか皮膚の血管、とりわけ恥ずかしくなったときに赤らめる顔の部分の血管が拡張するようです。この、アトロピンによる顔面紅潮を英語では、atropine flush(アトロピン・フラッシュ)と呼んでいます。
 毒性が表れる容量で生じますが、通常の容量でもしばしば起こります。この逆説的な血管の反応のメカニズムは、どうやらよく分かってはいないようです。Goodman and Gilmanのテキストによれば、発汗の抑制にともなう体温上昇の代償反応として、皮膚血管の拡張が起こるのかもしれない、つまり、本来のアトロピンの作用とは無関係かもしれないとのことでした。(このatropine flushは、アトロピンの点眼薬でも起こるらしいので、眼科領域でも問題になっているかも知れませんね)

 
もう少し待てば、目の前のもみじが真っ赤に色づきます
来週の週末は、夜間のライトアップもあるそうです