2013年11月28日木曜日

脊椎麻酔の満足度

京都市立病院麻酔科の特徴のひとつは、脊椎麻酔症例が比較的多いことでしょうか?

 年間、五百数十件の脊麻症例が麻酔科管理で行われています。そのうち、帝王切開術の脊麻が百例弱あります。帝王切開術の麻酔は、母体と胎児というふたつの命に目を配らなくてはならないので、脊椎麻酔のアドバンスト・コースと言えそうです。

Hn先生曰く、君は脊麻免許皆伝や、と。

 今週某日、Hm先生は、一日に脊麻を4件担当した日がありました。
 そのうち2例が帝王切開というスケジュールでした。Hm先生は、Hn先生の指導のもとに無事に麻酔をされました。



 また、研修医2年目のKs先生は、某日、BMIが44 kg / m²を超える妊婦さん(160 cm / 118 kg)の脊椎麻酔に挑戦されました。
 普段の脊麻針より2 cm長い、9 cmの23G脊麻針を用いて、クモ膜下穿刺をされました。肥満体型の患者さんの脊椎麻酔は、椎間孔の位置が同定しにくばかりでなく、針がまっすぐ進まず、思わぬ方向にブレていることがあるので、難しいのです。

 しかし、Ks先生は、Ho先生の指導の下に、無事に脊椎麻酔を成功されました。









肥満体型の患者さんの脊麻を終えて、
珍しく笑顔のKs先生


 脊椎麻酔は、最初の薬液投与で、ほぼ九割方決まってしまいます。その意味では、水彩画に似ています。一度塗った絵の具の上から他の色を重ねると濁ってしまうように、後から修正するのが難しいのです。(それに対して、全身麻酔は、後からけっこう柔軟に軌道修正ができるので、油絵に似ています)

 しかも、脊椎麻酔は、患者さんの意識がある状態で、背中側から、患者さんが見えない部分に注射をしなければならないので、痛い思いをさせたりすると、けっこう患者さんを不安に陥れてしまうものです。だからこそ、一度でクモ膜下穿刺を成功させれば、患者さんの満足度は上がるのです。
 そして、一度で脊麻が成功すれば、研修医の先生の満足度も上がるのです。