2013年10月10日木曜日

手術室の省略表現と研修医の戸惑い

 腹式単純子宮全摘と言うよりも、ATと言った方が簡単に通じます。ATとは、Abdominal Total hysterectomyの略。手術室では、このような略した言い方がよく使われます。

 一年目の研修医の先生方が戸惑うことのひとつは、各科で慣用されている省略表現の意味がよく分からないということではないでしょうか。
 昨日から、麻酔科研修に来られているNs先生は、翌日の手術時の麻酔を相談していたとき、Hs先生から「TULって何の略なん?」と質問されてしどろもどろになっていました。
グアム旅行から帰ったばかりで、
真っ黒に日焼けしたNs先生

 泌尿器科では、TUR-何とかという術式をよく見かけます。これは、Transurethral Resectionの略で、「経尿道的切除」という意味です。たとえば、経尿道的に膀胱腫瘍(Bladder Tumor)を切除するのであれば、TUR-BT。前立腺(Prostate)を切除するのであれば、TUR-Pとなるわけです。
 で、TULのTUは経尿道的(Transurethral)でよいのですが、最後のLは結石を砕く砕石術という意味の、Lithotomyを表しています。結石は、尿管にある場合(尿管結石)と膀胱にある場合(膀胱結石)があります。
 尿道というのは、英語ではUrethra、尿管は、英語でUreterと言います。Urethraのアクセントは第二音節にあり、Ureterのアクセントは第一音節にあります。スラレタアですね。

 このように略号は、便利なのですが、何でもかんでも略してよいわけではありません。学生時代、受け持った症例をプレゼンするときに、「患者は、EGCを指摘され云々」という表現をした友だちがいました。そのEGCが何度かプレゼンの中で出てくるのですが、聞いている者たちは、「?????」。
 たまらず、ひとりの学生が、「EGCって何ですか?ECGの間違いではないのですか?」と質問をしました。すると、「あ、EGCはEarly Gastric Canser(早期胃がん)の略です」との答え。これを聞いて、みんな唖然としていたことがありました。普通、早期胃がんをそんな風には略しませんね。

 何でもかんでも省略してしまえばよい、という訳でもなさそうです。

 さて、ここで問題です。MHとは何の略でしょうか?
 麻酔科医だったら、Malignant Hyperthermia (悪性高熱症)のことだ、と言うでしょうね。でも、ブリティッシュ・ロック・ファンだったら、それは、Motörheadのことじゃろう、と主張するかもしれませんね。

この鞄、実はSz先生のもの。
もっともSz先生は、機能面だけで選ばれたのだそうですが…