2013年8月25日日曜日

守破離とTTP三段活用

 しもやんランド代表の下川浩二さんは、TTP三段活用を勧めています。

 今、世間で議論されているTPP(環太平洋パートナーシップ)協定のことではありません。TTPすなわちTettei Tekini Pakuru(徹底的にパクる)です。パクるというのは、かつては不良がモノを盗んだりすることをさして言う言葉でしたが、最近では「物まね」とか「人のアイデアをそのまま自分のものとする」という意味に使われています。

 下川さんは、オリジナルなことをやろうとしたり考え出そうとするから、何もできずに立ち尽くしてしまうのだ。成功している人のやり方、あるいは自分がいいなと思った人のやり方は、真似して実行すればよいのだと、『人生は、マネしてトクして楽しもう。』(サンマーク出版)で述べています。


 三段活用なのは、TTPの後に、TKP、OKPと続いているからです。
 すなわち、TKP(Tyotto Kaete Pakuru)=ちょっと変えてパクるOKP(Omoikkiri Kaete Pakuru)=思いっきり変えてパクるというのが、マネをする技術の三段階で、三段活用と表現しています。

 昔から、武道や芸能の世界では、守破離という言葉がありました。
 すなわち、まずは師匠の言ったことしたことをそのままそっくり真似て型を身につける(守)、それから自分にあった型を見つけるために試行錯誤をくり返す(破)、そしてついには師匠を超えるオリジナリティを身につける(離)といったところでしょうか?

 下川さんが言うTTPの三段活用も、この守破離の考え方に沿っていると考えてよいかもしれません。

 麻酔科研修では、静脈路確保、喉頭展開から気管挿管、あるいはラリンジアルマスクの挿入、動脈ライン、中心静脈確保、クモ膜下穿刺、硬膜外穿刺等々、手技的な内容がけっこうあります。ですから、守破離またはTTPの三段活用が研修するときの姿勢として求められるのではないでしょうか?
 ぼく自身もかつては、上級医のやる姿を見て真似て、他の先生のやり方と折衷したりしている内に、今の手技が確立してきました。(もっともまだまだ完成はしていないところも多いのですが…)真似ているうちに、何となくしゃべり方まで教えてもらった先生の口調になってきたことがあって、苦笑いをしたこともありました。



 2500年も前に、弟子たちに色々なことを語って『論語』に人生のマニュアルを残した、かの孔子だって、自分はオリジナルなことを言っているのではない。すべて、古典から学んだことを言っているだけだ(子曰く、述べて作らず、信じて古[いにしえ]を好む{述而第篇})と言っているくらいです。

 ふだん、ぼくが研修医の先生に向かって語っていることも、ふり返ってみれば、自分が研修医時代に上級医から言われたことであったり、教科書を読んで得た知識であることに気づきます。孔子の弟子の曾子が言ったように、よく確かめることもせずに、受け売りで人に教えたりしていないかを毎日反省しなければならない(曾子曰く、吾れ日に三たび吾が身を省みる。…習わざるを伝うるか。{学而篇})な、と改めて思う今日この頃です。