2013年8月19日月曜日

麻酔と喫煙

 術前には、患者さんに禁煙を勧めています。

 術前に禁煙すると、どのようなメリットがあるのでしょうか?

 禁煙を12〜48時間すると血中の一酸化ヘモグロビン濃度が減少し、酸素解離曲線の右方シフトが起こるため全身への酸素供給が改善されます。
 また、2〜3日間の禁煙で、気道の線毛運動が改善します。
 1〜2週間の禁煙では気道分泌が減少し、4〜6週間の禁煙で小気道の機能が改善します。そして、8〜12週間以上禁煙することで、術後呼吸器合併症が減少するとされています。
 したがって、胸部外科や侵襲の大きな開腹術などでは、術後の呼吸器合併症を減らそうとすれば、2、3ヶ月前から禁煙していることが必要となるのです。(稲田英一『麻酔への知的アプローチ』第8版(日本医事新報社)より)

 そもそも喫煙のメリットなど何もないのですが、喫煙している方はニコチン依存に陥っているので、なかなか煙草を止めることができないようです。
「煙草は嗜好品だから、吸うも吸わぬも個人の勝手」
「有害物質で癌になって早死にしようと自己責任」
という意見もあるようです。
 しかし、どのように表現しようとも、タバコに有害物質が含まれている事実は変わりません。また、最近言われているのは、受動喫煙の害。すなわち、喫煙者の周囲にいる副流煙を吸った人たちへの影響です。
 ここに喫煙が「自己責任」で終われない理由があるのです。



 『悪魔のマーケティング』(日経BP社)という本があります。
 この本では、インタビューや新聞でのコメントなど、タバコ産業自らが語った言葉で、彼らが隠そうとしている事実を暴いています。この本によれば、欧米のタバコ産業が隠していた”真実”とは、次のような項目です。

①タバコの広告の多くは未成年と女性をターゲットにしている
②子どもになるべく喫煙させよう
③女性マーケットは”おいしい”
④狙うべきは、旧東欧、アジア、アフリカの新興市場だ
⑤低タールタバコを吸っても、健康は維持できない
⑥タバコには強い依存性がある
⑦タバコは、いうまでもなく健康に悪い
⑧以上の理由により、タバコ産業のエグゼクティブの多くは、タバコを吸わない

レベッカ・ナグラーさん

 ハーバード公衆衛生大学院博士研究員(ポスドク)のレベッカ・ナグラーさんは、次のように指摘しています。「映画はストーリーを楽しむのが主な目的であって、『タバコは魅力的』と売り込む目的で映画を制作しているわけではないのですが、憧れの役者たちがタバコを吸う場面が若者がタバコを吸い始める強力なきっかけになってしまう」
 そして、映画はあくまで「作品」であって広告ではないので、国際条約である「タバコ規制枠組み条約」の規制対象外となってしまうのだそうです。




 この観点からすると、昨日ふれたジブリの新作『風立ちぬ』の喫煙シーンも、若年者に与える影響を考えれば、ひとつの「作品」であるとはいうものの、やはりちょっとひっかかるものがありますね。

今日のお土産

 ご家族で大分県に旅行をされたAk先生から、大分土産の南蛮菓ざびえるをいただきました。


 フランシスコ・ザビエルは、天文20年(1551年)に豊後の国を訪れていたのだそうです。そのため、府内の町(今の大分市)には、ザビエルの遺徳をしのぶキリシタン殉教公園や銅像など、数々の祈念碑があるのだそうです。そして、このザビエルの功績をたたえて、和洋折衷の菓子、南蛮菓ざびえるがこの町で作られたということです。


 ありがとうございました。









個別包装紙のロゴに隠れて、
金色の十字架が見えます
よく見ると、
銀色の十字架バージョンもありました