2013年2月4日月曜日

窓からの景色は病気の回復に影響するか?

 今日は立春。暖かい雨が降りました。

新棟5階のバルコニーに植え込みが…
京都市立病院新病棟を北側から眺めると、5階にあたる病室の窓の外に植え込みらしきものが見えます。








 これを内側から見ると、やはり、バルコニーに植木が植わっていました。

5階の病室からの眺め
 この階は、特別室および緩和病棟になると聞いています。病室から緑が見えると心が和むでしょうね。













 かなり以前の論文ですが、病室の窓からの眺めが外科手術の回復に影響を及ぼす可能性があるというのを読んだことがあります。(Roger S. Ulrich : View Through a Window May Influence Recovery from Surgery. SCIENCE. VOL.224 27 APRIL : 420-421. 1984

 開腹胆摘を受けた患者46名を二つのグループに分けます。一方のグループは、窓から落葉樹の木々が見える病室(グループ[木々])で療養し、もう一方のグループは窓から茶色のブロック塀しか見えない病室(グループ[ブロック塀])で療養します。それぞれのグループの環境は室内の調度や窓の大きさ、ケアをするナーススタッフについても差がない、という条件設定を行います。その上で、両者の入院期間、ナース記録のネガティブな表現(たとえば、いらつく、泣く、もっと励ましがいる、など)が現れる頻度、鎮痛薬の量などについて比較をしてみました。

 結果、
 ①入院期間は、グループ[木々]が7.96日、グループ[ブロック塀]が8.70日。
 ②ナース記録のネガティブな記載については、グループ[木々]が患者1人あたり1.13件、グループ[ブロック塀]が患者1人あたり3.96件。
  ③鎮痛薬の使用量は、術後一日目は両者の間に差はなかったけれども、2日目から5日目にかけては、グループ[木々]の方が、グループ[ブロック塀]よりも有意に少なくなっていました。

 やはり、病室からの眺めも、急性期の患者の回復に何らかの影響を及ぼしているようですね。

 病院建築を研究されている伊藤誠先生は、『ヨーロッパの病院建築』[丸善]の中で、ヨーロッパ各地の病院を紹介されています。
 上には上があるものです。

チェルシー=ウェストミンスター病院
(ロンドン)のアトリウム
ヘスペリア病院(ヘルシンキの都心にある精神病院)の
デイルーム。

チモーヌ病院。マルセーユの地中海にのぞむ丘の上に立つ
1460床の大病院の小児待合ホール

サン=ルイ病院。パリの都心にある750床の公立病院。
全面ガラス屋根の玄関ホール。極彩色の給気筒や渓流のせせらぎが
来院者の気持ちを明るくしている。