これは、京大と府立医大と滋賀医大の麻酔科が合同で開催している研究会で、今年は府立医大の佐和貞治先生が世話人をされています。
昨年日本に導入されたデスフルラン麻酔がテーマのひとつで、名古屋大医学部麻酔学講座の西脇公俊教授が、名古屋大学でのデスフルランの使用経験について特別講演で話をされました。
名古屋大学では、デスフルランの治験段階からかかわっているとのことですが、現在は全手術室にデスフルランとセボフルランの二系統の気化器をそなえているとのことでした。
導入後、これまでの使用割合は、デス14%、セボ48%(残りはTIVA:プロポフォールをを用いた完全静脈麻酔)ですが、2013年1月、2月だけでこの割合をみると、デス35%、セボ27%だったそうです。つまり、吸入麻酔薬vs静脈麻酔薬の割合は変わっていないのに、吸入麻酔薬のうち、デスフルランを使用する頻度が増えてきているとのことでした。
西脇先生は、以前にドイツ人の麻酔科医から教えてもらったという18ルールというのを紹介して下さいました。
これは、「デスフルランの設定濃度×フレッシュガス総流量が18以下であれば、デスフルラン麻酔で、ときに見られる頻脈・高血圧を避けられる」というルールです。あくまで経験則です。(ドイツ人麻酔科医からは、18ではなく、24と言われたそうですが、24だと日本人には多すぎるのか、頻脈・高血圧となる例を経験されたとのことでした)
デスフルランの気化器の目盛りは18%まである |
このとき、京都市立病院麻酔科では、挿管後、総流量を1L/minまで落として、デスフルランの気化器の濃度設定を一気に18%くらいに上げる流派があります。が、一方では、導入時の6L/minの流量のまま、デスフルランを3%程度で流すという流派もあります。
西脇先生の話を聞いて、どちらの方法でも、デスフルランの設定濃度×フレッシュガス総流量が18となるので、OKだったのだと安心しました。
いずれの流派に従うにしても、呼気ガスモニターでデスフルランの呼気ガス中の濃度をフィードバックするのは必須となります。
西脇先生は、講演の前半で、名古屋大学医学部の手術室運営を改革されてきた経験を語って下さいました。その中で印象的だった点を、二つ紹介します。
ひとつは、本来外来手術のために用意された手術室を比較的短時間で終わる症例に限って入院症例でも使用するようにされたこと。この手術室の利用は、9:00から15:30までの6.5時間に制限しているそうです。(この時間設定だと、延長しても定時には麻酔業務が終了します)
ここでの麻酔を、たとえばママさん麻酔科医にお願いすると、彼女たちにとっても働きやすい環境を提供することができるとのことでした。
新棟では、手術室とICUはお隣り同士 |
西脇先生は「いい麻酔科医を作るには外科系ICUを麻酔科が管理しなければならない」と、強調されていました。
府立医大の佐和先生も、ICUでは、各科の主治医制は継続しつつも、ICUの入退室の判断や呼吸・循環・感染・免疫など集中治療を必要とする分野では、主治医と連携をとりつつ麻酔科医が関わっていくべきだろうとおっしゃっておられます。
左手ドアが手術室の入り口 右手ドアがICUへの入り口 |
でも、麻酔科とICUの運営上の距離はまだまだありそうです。